「Thoughts on Music」に思う



スティーブ・ジョブズ氏が昨日発表した公開書簡「Thoughts on Music」。
全訳をお探しのみなさん、こちらです(老眼じゃない方はこちら初報要約)。

ここミトウ氏がコメントくれたように、書簡はノルウェー消費者審議会からの違法判決にこたえるかたちで発表された。

ショーン・ファニングが世紀末に言ってレーベルに全く相手にされなかったことを、ちゃんと時間をかけて相手の言うとおりDRM完備して合法的に売って、デジタル楽曲市場で独占的地位を築き、無視できないポジションまで足場を固めた上で「DRMは論理が破綻しているんだよ」という“物証”を一揃い用意して「別の道を真剣に考えよう」と呼びかけた。これは、みんなにとって良いニュースになる気がする。

ノルウェーの例の審議会上級顧問Torgeir Waterhouse氏はこの書簡にだいぶ心証を良くしたようだ。ただ、まだ「iTunesはiPodにロックされてる」と言ってるとこ見ると、CDに焼いてMP3にできること知らないようだ(ふつう知らないか)。

まあ、でもノルウェイにはこのボケ路線で自国音楽産業保護育成にまい進してもらわなくては困る。「ロックかけて消費者を自分の島に囲いこむんじゃなく、もっとどこでも買えてどこでも再生できるように、フェアにやれ」という主張はストレートだし、消費者なら誰でも思っていることだろう。

時期的にはちょうど音楽配信の7割を牛耳るビッグ4(ユニバーサル、ソニーBMG、ワーナー、EMI)とアップルの契約がそろそろ1年の満期を迎えるタイミング。春の契約更新にむけた「春闘」という背景も理解しておくとよいだろう。自分的に「へえ」と思ったのは以下3つ。

1.iTunes販売楽曲はiPod保存楽曲の3%未満

  これは正直、驚いた。そんなに少ないとは!

2. DRMが破られた場合、アップルには数週間の猶予しかない。その間にブロックできなければレーベルは全楽曲をiTunesから撤退してしまう。

  厳しいねー。先月も「iTunes全楽曲をWiiで再生、DRM破りなアプリ」をギズモで訳したけども、こんな風に表面化する場合もあれば、ない場合も。「いたちごっこ」は誇張でもなんでもない、現実だ。

2. 違法コンテンツはどこから来るのか?CDだ。
  ではCDを売ってるのはどこか?レーベルだ
  
これはきっと「なんでレーベルは鍵もかけずに売ってお咎めなしなわけ?」と言いたいのだろう。MSもAppleもこんな途方もなくデカい鍵つくっては、途方もなく暇で尚且つ頭のいいハッカーに鍵こわされて、この調子じゃライセンス供与なんて悪夢だ、オープンになんかしたらゼッタイ追いつかない、iPhoneもクローズドじゃ先が見えてる…なのに、なんでレーベルは錠前ひとつ要らんわけ? と。

確かにその通りで「違法コンテンツ憎し」言ってる割にはレーベルはCDから一歩も動いていないし、アーティストを違法コピーから守れていない、それはiPodの数字を見たら誰でもわかる、97%である。その多くはCD焼いた違法コピーであるかもしれないのに、そこは見て見ぬフリ。合法ならそれでいいというところが、後ろ向きだなー、と思う。

「DRMは終わってる、やめよう」という話はリアルネットワークのロブ・グレイザーCEOも長年言ってることだし、ヤフー・ミュージックのデイブ・ゴールドバーグも同調している。レーベルからの反応が楽しみだ。

関連:
TechCrunch, 2006.12.15.-Bill Gates、DRMの未来について語る
 ビルG.からのアドバイス:「CDを買ってリッピングすべし。これなら合法的だ」
TechCrunch, 2007.01.10.-DRMの死は不可避だ

Comments

  1. こんにちは。

    デジタル→デジタルのコピーは2回(1回?)まで、
    という時代が懐かしいです。
    CDRの登場でデジタルデータの保護は終わった、
    と個人的に思っていました。

    今は安価なオーディオインターフェイスがあるため、
    アナログで一度出力すればデジタル化できます。
    そういう意味では暫定的な問題かも知れませんね。

    それともう一つ思ったことがあります。
    BMGなどは非常に安いCDを提供しています。
    1年落ち程度ならS&H込みで1枚5、6ドルで買えます。
    1曲あたり50セントほど、DLするより安く高音質です。
    大手レコード会社はおそらく全て、
    似たようなサービスをしていると思います。

    DRMが破られた場合の措置が厳しいのは、
    こちらの売り上げが影響しているかも知れません。

    それにしても何かちぐはぐですね。
    長々と失礼しました。

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  2. でしょうね…。

    1曲99セントでもアップルの取り分ほとんどないって言いますもんね。なのにiTunesはまだ安い、もっと値上げしろってレーベルから要求があって「強欲だ」ってジョブズ氏が民意に訴えて撥ね退ける一幕が去年ありましたよね?

    今回の書簡は「アップルはクローズド」というEUからの批判の矛先をレーベルにかわしたところが、うまいなーと思いました。実際、鍵をかけることでしかネットは合法性を主張できなかったわけだし…。

    あー、あと、な~んとなく話の流れを追っていくと、もしかしてアップル、レーベルのようなこともしていきたいんじゃ? ビートルズとも折り合いついたことだし。アップル・コンピュータじゃなくなったことだし。ね。

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  3. ジョブスの価値は2兆円、だけに納得です。

    レーベルの件はかなり可能性あると思います。
    広告宣伝やディストリビューションを考えれば、
    やらない手はないですよね。
    アップルのことなので時期を考えているか、
    すでに進行中かも知れません。
    マックフリークとしては是非がんばって欲しいです。


    まったく関係ないんですが質問です。
    ここ2日ほど僕のブログに、
    中国からのアクセスが急増しています。
    ほとんどがダイレクトで飛んできているようです。
    何か心当たりなどあれば教えて下さい。

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  4. ブログ拝見しましたけど、どこも異常ないですよね…?

    でも寄って良かった、これ、ずっと昔、ベガスで見た気がするんですよね、すごかった。

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  5. 今回の件だけど、satomi氏のこれが2~3日前はてブで復活してた件と連動してるのかな?

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  6. ありゃま。TOMさん、そろそろ削除するって言ってたのでココのLINK先もWaybackにしちゃってますけど…。

    あ、そっか、Thoughts-のことブログに書きたい方たちが過去エントリ引っ張ってきたらNetPlaraさん…はてブで上位だった…のリンク切れに気付いたんでしょうね。そかそか…

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  7. わざわざコメントありがとうございます。

    中国の件は僕の方に書いておきました。
    この仕事はデザイン関係です。
    ヒスパニックコミュニティーの
    糖尿病に関する非営利団体の仕事です。
    糖尿病にまったく無知だったので、
    仕事の前にリサーチしたって感じです。

    無意味に詳しく調べすぎました。

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