ネット中立性バトルを読み解く:Net Neutrality

My friend requested me to write about net neutrality. It's been the central issue in the House, but he's not quite sure what's really at the stake.

「ネットの中立性(network neutrality)」について解説が欲しいとX氏からネタ振り。
"When I invented the Web..."(!)で始まるTimBerners-LeeポストとTechdirtのココココココの関係がいまいち。[...]直訳記事は背景を説明してくれません
う~ん、確かにこの問題、論点が見えにくいよねえ(谷脇康彦氏の解説-BP日本にも波紋広げるネットの中立性問題by小池良次氏:IT-PLUS)

■ネット中立性とは?
「ネットのアクセスは万人平等に」という原則。英・韓・日でも明文化されている。米国会では昨年暮れから通信法改革審議でブロードバンドプロバイダが有料高速サービスプラン開設の合法化法案を出し(4月下院商務委が法案承認)、焦ったネット各社が「帯域幅消費量に応じた課金システムはトラフィックを差別的に扱うことでネット中立性原則にもとる」と、課金システム撤廃の反対法案で春から反撃に出た(5月25日下院司法委で可決後、今月8日下院が269対152の反対多数で否決、今後は上院に送られる)。

「ネット中立性」を最初に提唱したのはコロンビア大ロースクール教授ティム・ウー氏(近著「Who Controls the Internet?」)で一番下の動画にも出てくる。法学部教授スーザン・クロフォード氏が別の角度からネット中立性擁護を主張し、2001年にはローレンス・レッシグ教授が”The Future of Ideas"で多角的検証を行い研究分野として確立した。FCCマイケル・パウエル会長もこの問題に早くから取り組んでいる(Wikipedia)。

双方の主張をプロパガンダの解説で追ってみよう。

「ネット中立性」保護反対派
AT&T、ベルサウス、ベライゾンら電話事業者とCATVケーブル会社、
ネットワーク技術者、一部ハードウェアベンダーほか各種団体
公式サイト「 Hands off the Internet」


PR動画①-画像をクリックしてね
看板「WWWの終焉:インターネットを救え!」
(概略)光ファイバー普及で容量100Mbpsの今日、通信電話会社は① 電話②救急③HD動画④デジタルTV⑤未曾有の新技術のため高速道路を整備しようとしている。ところが、"ネット中立性”の名のもとにこれに反対する人たちがいる。”みんな一つのレーンで走ろうよ”ってね。でもそれじゃあ、ネットはゴミ捨て場になっちゃうよ。


PR動画②-画像をクリックしてね
(概略)大容量通信にタダ乗りのGoogle、MS、Yahoo!は”ネットを救え”を旗印にネット中立性保護法案を通過させようとしている。でも、それって結局、自分のツケをみんなに払わせようってことじゃない?


■主張■
グーグル、ヤフー、イーベイ、VoIPはじめコンテンツ&サービス・プロバイダは電話会社の設備投資に「タダ乗り(free ride)」*。これからは動画やHDの普及で混雑して大変なんだから、高速の安定した通信環境が欲しい人はお金払ってターンパイク走ってね。それなら普通道も負担が減るし。

…とまあ、彼らも彼らで「FCCが昨年8月に策定した”ネット公共性”の定義を支持している」という。「ユーザには合法コンテンツ、サービス、アプリケーション、デバイスにアクセスする権利があり、ネットワークプロバイダとアプリ、サービス、コンテンツプロバイダの間には競争が必要」という原則のことだ。「メールとネットサーフィンだけの人が何故ゲームや動画見放題の人の分まで余分に払う必要がある?コンテンツプロバイダが言う"one-size-fits-all(共通サイズ)”こそネットを危機に陥れる発想だよ」

*「タダ乗り」論
今年1月末、AT&T社CEOのEd Whitacre氏(通称'Big Ed'、下の動画に何度も出てくる)がFTに語りココココで大激論となった。概ね「ケーブルやワイヤレスに比べファイバーが採算割れなことに目覚めたAT&Tが、Googleから徴税しようとしている」という見方だ。大容量コンテンツ視聴分をユーザが負担するなら分かるが「コンテンツ提供側に課金するというのは、ユーザがキャデラックにハイオク満タンにするたびにエクソンがGMに課金するような話だ」という声も。(日本の関連記事)

■背景■
  • 電話会社には「(光ファイバーの膨大な先行設備の)投資分は回収しなさいよ」と、投資サイドから大きなプレッシャーがかかっている。
  • 昨年8月の最高裁判決でブロバ接続サービスは70年続いた通話キャリア規制の網から外されFCC管轄下に置かれた。
  • アプリのタイプに応じIPブロックがかなり容易になった。
  • 電話会社はVoIPと携帯に押され、CATVケーブル会社はコルベアの時もそうだったけど「ネットで見れるんだから、もう解約しちゃおう」というユーザが急増、斜陽になりかけている。
  • 課金化の先頭に立っているat&tはSBC、Ameritech、PacBell、SNET、AT&Tワイヤレスの合併統合に1,400億ドルを費やしたが時価総額は400億ドルしか上がっていない。

「ネット中立性」擁護派
IAC/InterActiveCorp, eBay, Google,マイクロソフト,
アマゾン, ヤフー, Earthlinkなどネット大手と各種団体
公式サイト「Save the Internet



アマゾンのメグ・ホィットマンCEO、グーグルのエリック・シュミットCEOがユーザに署名を呼びかけ話題になった。ウェブ生みの親たちも次々に中立性支持を表明中。

■中立性擁護派が見るtelco(電話会社)側の主張の問題点■
(Save the Internet : Big Lie of the Weekが早分かりかも)
  • 使用帯域数に応じた使用料は既に支払っている。昨年1年間でコンテンツおよびサービス・プロバイダの大手は容量拡張のため何十億ドルという料金を電話&ケーブル会社に払った。「タダ乗り」論は都合のいいレトリック。
  • ISPが「見せるコンテンツ、見せないコンテンツ」を彼らの胸三寸で決めることができるようになる(=不当なアクセス制限)。実際これまでにも ISPが自社に都合の悪いニュースやメール、ライバルコンテンツにアクセスをブロックした悪しき事例が報告されており、トラフィック差別容認はパイプを管理する彼らに(彼らが発明したわけでもない)インターネットの覇権を委ねることに他ならない。
  • アメリカの地域の過半数はブロードバンド接続が1社以下だ。残り半分はケーブル1社にDSL(電話会社)1社という大手独占状態にある。どこに競争や選択の自由があるのだ。
  • 使用状況に応じて課金はできてもネットはリレー。受取人は誰になるのか??
  • A社の課金とIPブロックが気に入らなくてB社にプロバイダを乗り換えても結局A社の回線を通ることになる。1社がこれをやり出すと選択の自由など無いのではないか。
  • Hands off the Internetなんて草の根のフリした企業広報ではないか。紛らわしい。

(上:広報バナー「ネットを守りましょう。オンラインコンテンツのコントロールを自分たちの手に。わたしたちのネット」)

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Comments

  1. BlogosphereはNet Neutrality擁護派が多数派なのかなあ。しばらく目が離せません。それはそうと検索結果もネット中立性に含まれると思うのですが、百度の記事読んでぶっ飛んでしまいましたワ。

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  2. 笑。この辺じゃ「グーグルの検索結果を政府に密通するだけで生き延びてる」って冗談もあるし。>Baidu

    中立性どころか中国本土は天安門のたびにWikipedia全部ブロックする政府が相手だもんね…

    Blogosphereは、そうね、中立性擁護が主流だけど規制については「時期尚早」って穏健派も。ネットワークの人たちは技術的立場から「交通整理は必要」って見方だしね。

    エンドユーザを従量制にすることは考慮外らしい…。しょうがないから配信側から取っちゃえってことだけど、要は払いに応じてスピード操作(例えばヤフーが色つけたらグーグルは遅らすとか、スカイプは払わないからブロックしちゃえとか)したり、独占をいいことに通信速度を交渉の道具にしなければいいんですよ。でも、「それもあり得る」というトップ発言があったりするんで油断できんのよ。

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