ゲーム書いてAppStoreやSteamでリリースしたら、ひと晩で人も羨む億万長者になり、割り切れない気持ちに悩むインディーズゲームデベロッパーが増えている、という話をニューヨーカーが特集している。
贅沢な悩みにも聞こえるが、注目されると、もうそれだけで悪口や妬みを買うものなので、苦痛に思う人がいるのはわかるよね。
“Ever since I was a kid I’ve watched my mom wake up at six in the morning, work all day, come home, make my brother and me dinner—maybe shout at me for too much ‘computering,’ ” he said. “My first thought that day was that while I was asleep I’d made more money than she had all year. And I’d done it with a mobile-phone game about shooting fish with a machine gun.”
2013年3月のある晩、ラミ・イスマイールは仕事のパートナーのヤン・ウィレムと一緒にモバゲー「リディキュラス・フィッシング」をリリースした。イスマイールはオランダに住む24歳(当時)。翌朝目が覚めたら、ひと晩で何百万円もの大金を手にしていた。知って真っ先に感じたのは高揚感より罪悪感だった。
母親は地方公務員で、その日ももう仕事に出ていた。「物心ついた時から、朝は6時に起きて、1日中働き詰めで、家に帰ると僕ら兄弟に晩ご飯つくって、『コンピュータばっかりやって』と言う、そんな母親を見てきた」、「あの母親が何年も何年も働いてやっと手にした稼ぎより沢山の金を自分は寝てる間に稼いだのか…とまず思った。それも魚をマシンガンでぶっ放すモバゲーで」
リディキュラス・フィッシングはアップルAppStoreで初月数十万ドル(数千万円)を売上げ、2013年のアップルWWDCでデザインアワードを受賞した。イスマイールとウィレムは大学時代に一緒にゲーム製作を始めた仲間。リディキュラス・フィッシングは貸しオフィススペースでインスタントラーメン漬けで作ったゲームだ。「『生活の安定を犠牲にして、破産するリスクも抱えながら、一生懸命働いたんだから』と、頭の隅では思ってるんだよ」、「誰もやろうとしない、誰にもできないことをやって、それが報われたんだって。ただわかっちゃいるんだけど、どうにも違和感が。車で仕事に向かうあの母親の姿が、どうしても頭から離れないんだ」
インディーズゲームで一攫千金当てるのは「宝くじに当たるようなもの」(イスマイールさん)で、例えば…
・そんなに儲かってもお金の使い道に困る
・必要以上に目立ってプライバシーがなくなる
・他人のやっかみがすごい
・何十年も会ってない友だちや遠い親戚が金の無心にくる
…といった問題があるようだ。記事では『Flappy Bird』で億万長者になったドン・ニューイン君や以下のような人たちを紹介している。
『Stanley Prable(スタンリー・パラブル)』で億万長者になったデイビー・レーデン(Davey Wreden、24歳)
彼のことはイスマイールが「これは売れる」と思ってテキサスまで会いに行き、「儲かったお金で買うものをひとつ考えておくといいよ」とアドバイスした。その時は外出して2時間で戻り、「よし決まった。一番安い鮭と一番高い鮭を買って調理して、値段なりの差があるか食べ比べしてみる」と言ったんだってさ。やがてゲームは売れに売れ、英国の10代アーティストのウィリアム・ピュー(William Pugh)と合わせて630万ドル(6.5億円)の資産家に。レーデンは卓球台を買った。2013年ゲーム・オブ・ザ・イヤー受賞後また取材攻撃がぶり返し、「感謝は山々だが最近鬱で困ってる。しばらくひとりにしてください」とブログに書いた。上がそのイラストだが、いやほんと暗い…
『Minecraft』で億万長者になったマルクス・ペアソン(Markus Persson)
最初は戸惑っていたが、やっとこの状況に馴染んで、移動は自家用ジェット、豪華パーティー開いてファンと友だちに富を還元する日々。この人はたぶん大丈夫。『Braid』で億万長者になったジョナサン・ブロー(Jonathan Blow)
大ヒット飛ばした人は「次」のプレッシャーも相当だが、彼の場合は儲かったお金を次作に注ぎ込み、意欲満々。この人もたぶん大丈夫。『スーパーミートボーイ』で億万長者になったエドムンド・マクミーレン(Edmund McMillen)
彼のことを紹介したドキュメンタリー『Indie Game: The Movie』が公開になってから、「あなたのようになりたくて自分も仕事辞めました」というメールが来るようになって困ってる。ワンルームで10年近くゲーム開発の仕事をしてきた彼は、「自分は一介のゲーム製作者、ひとりが好きなアーティストだ。売れてなければ今頃おんぼろワンルームでまた他のゲーム書いてるだろう。その方がよっぽど幸せだったかもな」と話している。
ゲームつくる人って面白いなあ。
[New Yorker]
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