シリコンバレー進出を目指す日本の若手起業家たち:New generation of Japanese entrepreneurs sets sights on Silicon Valley

San Jose Mercury News, November 2, 2012
H2L Inc.'s CTO&Director Ken Iwasaki, CTO&CEO Emi Tamaki, advisor Masaaki Sugimoto/
Issei Takino, co-founder of Mujin
Tatsunori Hirota , co-founder of mana.bo

今朝のサンノゼマーキュリー紙ビジネス欄1面にバレー進出を目指す日本の若手起業家の話が載っていたぞよ。

(前略)

日本では震災後危機意識を抱える若者が増加中。彼らは大企業に永久就職の道を捨て、自力でテックのスタートアップを興してシリコンバレーとつながることで自分の道を切り拓こうとしている。

「みんな家族を失って、これまでになく死を身近に感じた」と語るのは、M9.0の地震後プラグラミングを学び始めeラーニングサイト「mana.bo」を共同創設した東大(←慶大の間違い)経済学部学生Tatsunori Hirotaだ。夏のベイエリア訪問後、Mana.boはシリコンバレーのVCからも好評を博した。

「僕らは大企業のためじゃなく、自分たちのために働きたいんです。最大のリスクとは、本当に好きなことに打ち込む前に何かが起こってしまうこと。それはいつどこで起きるかわからないですからね」

日本技術産業は国際的にも影が薄くなってきている。日本では内向きの、リスクを嫌うカルチャーで起業精神が抑えこまれている。Global Entrepreneurship Monitorがまとめた2010年の報告によれば、その創業に対する意識は先進国でも最低ランク。日本人は起業を志す率が最も低い国とされる。

が、1万3000人以上の死者を出し、大停電、福島第一原発事故を引き起こした地震・津波を境に「大企業に対する信用の崩壊」が日本社会全体で起こっているのだ、とマウンテンビューを拠点に東京にも支社を置くEvernote社のPhil Libin CEOは言う。

信用崩壊はハイテク大手にも及び、終身雇用の伝統を破って大型レイオフする企業が相次いだ。

「若い世代は大企業にクビにされる親を見ている」と、東京のモバイル&ゲーム専用プラットフォーム開発会社GNTの幹部、Nobuyasu Kondoは語る。「大企業で働いてもクビになる時はなる、だったらリスクとって自分で会社始めた方がいいんじゃないの? ってことですね」

中国に世界第2の経済国家の地位も奪われ、今後の国の繁栄と経済が国際競争の脅威に晒されていることに日本人は敏感に勘づいている、と言うのは「UTEC」ジェネラル・パートナーの山本哲也(Ted Yamamoto)だ。UTECは東京大学と連携したベンチャーキャピタルで、そのミッションは教授陣と学生のハイテク起業を育成するスタンフォード伝統の産学協働をモデルにしている。

「日本市場が縮小しているのは明らか」、「人口も減ってる。日本をスルーして中国・インドに話がいっている」(山本)

政・財・学のリーダーたちは、技術大国復活のためにも起業文化の活性化が急務だ、と口を揃える。そこにシリコンバレー進出も含まれている。

「日本の多くの起業家・スタートアップにとってシリコンバレー進出は夢」だと語るのは、今年サンノゼ支社を開設した東京のイメージ処理ソフトウェア会社「Morpho」のジェネラルマネージャー、Yukiko Pollardだ。

だが、そんな日本の若手起業家のやる気を萎えさせる障壁もある。日本には起業を支えるシリコンバレー風のエコシステムがないのだ。Mana.boのような会社なら初期立ち上げ資金を現地のベンチャーキャピタルから調達することもできるが、なにしろ世界市場進出までじっくり研究開発を深めようにもそれにかかる多額の費用を出してくれる投資家がそんなにいないのだと、専門家らは言う。

「シリコンバレーならスーツを1着も持っていなくても(初期投資)2000万ドル調達することも可能ですけど、日本では資金集めがもっともっとハードなんですね」と、Evernote社Libin CEOは語る。氏は日本の技術力の大ファンで、日本への投資も検討中だという。

また、日本の起業家はシリコンバレーに縁のない人がほとんどだ。中国人やインド人と違って、日本人は海外留学する人も少ない。昨秋スタンフォードに入った学生は中国人が757人、インド人が488人なのに対し、日本人は54人だけだった。それもあって、日本人はシリコンバレーのスタートアップカルチャーの中の人と知り合う確率も低い。

しかしそんな傾向にも変化が訪れている。今は学生も働く若者も国境の枠に囚われず、学習・就職の場を模索している。国内でも、今までのように「日本語さえ話せれば間に合う」という考えから脱し、英語習得熱が高まっている、とオブザーバーたちは言う。

「大使館でもこないだ大学エキスポをやったんですが、”スタンフォードに行きたい”と言ってくる学生が本当に数えきれないほどいました」と、ジョン・ルース(John Roos)駐日米大使は言う。大使はパロアルトの著名法律事務所ウィルソン・ソンシーニ元CEOとしてシリコンバレーの企業多数と仕事をした実績もある。「最近ますます増えてます、米国の学校に通って、シリコンバレーに繋がりを持ちたいと考える日本人が。今はどこに行っても、行く先々でこの種のことが盛んに話し合われていますね」

確かに日本には頭脳集団なら幾らでも揃ってる。そのエンジニアリング能力の高さが疑問視されたことは一度もない。

「日本人のクリエイティビティはかつてないほど強くなっている」と言うのは、投資できそうな日本のスタートアップを探しているサニーベールのベンチャー投資会社「SunBridge Partners」創業者Allen Minerだ。「今の日本人はかつてないほど野心的。日本のスタートアップの創業者はほぼ全員、100年続く会社をつくるにはどうしたらいいかを考えている」

東大生が立ち上げた交流カフェに最近お邪魔してみる機会があったが、復活の空気がひしひしと感じられた。ブレインストーミングに使う大きな黒板もあり、カフェは変化を求める若者が集まるシンクタンクとして機能している。

玉城絵美(Emi Tamaki、28歳)は、日本にもスタートアップが沢山集まる場ができたら、そこを「Silicon Reef」と呼んで、自分もその新しいスタートアップカルチャーの一員として関わってゆきたい、それが夢だ、と話してくれた。

「会社を沢山つくりたい」と語る玉城は、コンピュータで手や指の動きを制御できる装置のメーカー「H2L」の共同創業者だ。H2Lの装置は手の怪我のリハビリに使えるほか、運指を誘導して楽器演奏を教えることもできる。

組立てラインのロボットに革命をもたらすのが目標のソフトウェアメーカー「Mujin」共同創業者Issei Takinoは、若きスティーブ・ジョブズのようにこう言い切った。「We can change the world」


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Comments

  1. >昨秋スタンフォードに入った学生は中国人が757人、インド人が488人なのに対し、日本人は54人だけだった

    この数字は、この三カ国の人口比にほとんど一致しています。
    統計的に考えると、日本人の数が有意に少ないとは言えないのではないでしょうか。

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