Nick Denton points at Kinja for Meg Hourihan and Peter Rojas; 2003 メグ・ホーリハンとピーター・ロジャスにKinjaを見せるニック・デントン(c)Gawker |
"If you think too much about the consequences, you just become part of the system. -結果ばかり考え過ぎても、体制の一部になるだけだ" - Nick Denton, Gawker/Gizmodo
次世代iPhone試作機を買った、ギズモードの親会社ゴーカー・メディアのニック・デントンにVillage Voiceフォスター・ケイマー記者が話を聞いた。
Gizmodo's iPhone Scoop: The Nick Denton Interview
-in Japaneseもうお聞き及びかもしれないが、Gawker Mediaのガジェットサイト「Gizmodo」が昨日(19日)、大スクープ(全訳)を発表した。この新iPhone試作機“入手”はハイテク史に残る大スクープと言っても過言ではない。
今夕その件でGawker社内のソースからメールがあった。なんでも「スティーブ・ジョブズから今日ジーゼス・ディアズ(Gizmodo編集者)とニック・デントン(Gawker Media発行人)に電話があって、“俺の携帯返せ!”と言ってきた」というではないか。当のデントンはというと、「見たこともない満悦顔でオフィスを一日中うろつき歩き回っていた。なんか言葉の綾とかじゃなく一日中…すごかったよ」
早速ニック・デントン(僕の元雇い主)に確認のメールを入れたら、ニックはIMの方が好都合だからIMで連絡くれと言う。取材では今回の彼のスクープについて、会社として法的にどう対処するのか、これを取り巻くジャーナリズムの目を通して見た場合、今回の報道はどうなのか、尋ねてみた。もちろん、本当にスティーブ・ジョブズからその忌々しいiPhoneを返せと電話があったかどうかもね。
Foster: Nick! Fosterです。
Nick: ヘイヘイ
F: すごい1日になりましたね。ジョブズがあなたとジーゼスに電話かけてきたって、本当ですか?
Nick: 電話かけてきたとしても、オフレコでしょ。その噂は僕もThe Awlで見たよ。
F: まさに誰もが想像する「good」な1日、ですかね? 返却のご予定は?
Nick: アップルから自分の所有物だというレターは受け取ったので、YES、もちろん合法的所有者の元に返す。
F: レターも公開するんですか?
Nick: 当たり前だ。
F: すばらしい。飲み屋で酔った勢いでiPhone「失くした」人、他人事じゃないですよね?
Nick: そうそう。俺自身何度か失くしてるからね。今晩Doug(彼氏)に言われて思い出したんだが。
F: 僕ら仲間内で一番しっかりしている人でもやりますもんね。ニヤニヤ笑いが止まらないのはあなたと部下だけじゃないと思います。笑えますよね。
Nick: まあね。レビュー用の製品もらえるよう、アップルのご機嫌取りしなきゃならない普通のガジェット報道よりは面白い。
F: アクセス“ジャーナリズム”ですね。iPad報道見るとその未来がかなり良く分かります。
Nick: あれ報じた記者のほとんどは広告業界の延長さ。
F: 誰か具体的に名前が浮かぶNY代表選手、います?
Nick: 咄嗟に浮かんだのはIhnatko(シカゴ・サンタイムズ紙アンディー・イーナトコ記者)
アップル番記者主席司祭Andy Ihnatko「スクープ報道なんてそもそも興味ない」。
だよね。Andy Ihnatko's Celestial Waste...(後追い記事へのリンク) (c) nicknotned
F: 僕が思うに、たぶんある特定の大手地方紙はアップルの世話に少々なってるのかもしれないですね。あなたとJason、Brian、Jesusには、アップルの公式イベントに今後アクセスできなくなるかも…という懸念は全くないんですか?
Nick: それは誰も考えもしなかった。ストーリー(特ダネ)があった。我々はそれを書いた。 君ならゴーカー流は知ってるだろう。結果ばかり考え過ぎても、体制の一部になるだけだ。
F: ですね、常に肝に銘じています。でもその上でお尋ねしたいんですが、アップルは自社が“助け”になると思い込ませた(あるいは相手が勝手に思い込んでる)メディアとの関係を通して、かつてメディアが持っていた尊厳を完全に傷つけているとお考えですか? 具体例をひとつ。ニューヨーク・タイムズはこのニュースをまだ取り上げてないですよね、僕が知る限り…
Nick: タイムズにも今晩載ると思うよ…BiltonはBitsにもちょこっと書いた。
F: それはそうだけど、この特ダネを自社で報じるとしたら、どうです? 彼らなら公開ボタン押す前にもう一度よく考え直してしまうと思います? 例えば、えーとなんだ…デイビッド・ポーグ(David Pogue:ジョブズが初代iPhoneを一番先に渡したお気に入り記者)が新iPhone見つけたら?
NIck: 知らん。君はどう思う?
F: 絶対迷いますって。
Nick: いや、僕が言ってるのはそうじゃなく、「ハイテク報道でこれ以上にデカいスクープが他にあるの? こんなスクープ目の前にしたら母親売ってでも手にしたいと思うのがジャーナリストだ。そう思わなきゃおかしい」ということね。
F: ところがそうじゃないんですよ、悲しいことに。いや、別に母親を愛しているからじゃないですよ。論点ズレますが。デントン・ママを取るべきか、iPhoneスクープか?
Nick: でも君なら書くだろ?
うちの母親はもう死んだよ。
F: そうだなあ、うちのママはユダヤ人の罪が苦手なので、たぶん、YES。
Nick: 僕は昔、フィナンシャル・タイムズ記者としてシリコンバレーの記事を書いていた。あそこまでコントロールフリーク(支配欲が病的に強い)な広報はそれまで経験したことがなかった。あれに比べたら、ニューヨークの会社の広報で働くプロフェッショナルなんて透明性の天使だよ。アップルの広報の人たちは、他のどの会社よりも大きな権限を持っている。…何故なら、この地球上で最もホットなガジェットへのアクセスを施しものとして分け与えることが、彼らにはできるから。彼らがハイテク記者の群れを牛飼いみたいに追い立てるのが悪いと言ってるんじゃない。僕が悪いと言ってるのは、文句らしい文句も垂れず屠殺場に従うハイテク記者の方だけだ。
F: 本当ですよね。しかしこのスクープにはお金を払ったんじゃなかったでしたっけ? ハイテク報道・特ダネ合戦は、持ち金の大きさを争うゲーム(試合、戦い)になるんですか? あなたの部下の信用を落とすために尋ねてるんではなく、あなたにそのお金がなかったら、独占報道に鍵を掛けるのもまた別の展開になったと思うんですね。 僕も(ゴーカーが)お金で買ったスクープを以前担当したことがあります。そりゃ最高でした。楽しかった。でも仮にそういうハイテク記者が報道路線を貫いてアクセス拒否されるのを望まず、スクープに払うお金もなかったとしたら…
Nick: うむ~
F: あなたは、今あなたが持ってるリソース(つまり金)が何もないところから、Gizmodoを始められた。従って理屈の上では、誰かが宣伝路線を避けつつ、それでも競争で立派に争っていくことは可能です。が、始めた当初からチェックブック・ジャーナリズム(小切手ジャーナリズム)をやる兆しはあったんですか?
Nick: 抵抗を感じたことは一度もないね。特ダネのためならなんだってやりますよ。それに情報提供者に金を払うと、「Jスクール(ジャーナリズム大学院)出の倫理学者がいらつく」という副産物の効用もある。All Things Dの記事は見た? YES? 僕は格別の注意を払って行えば、特ダネに小切手切っても構わないと思う。TV局は情報提供者に金を渡しつつ、特ダネは買わないと口では言っていて、あの捻れ方は笑えるよ。
F: あ、そういえば最後にひとつだけ。Gabriel(元編集長)が一度僕に、「Truth is the only virtue」(後で調べたら「Honesty is our only virtue」だった)の線でサイトのキャッチフレーズを考えてるんだよって教えてくれたことがあります。その時はちょっと皮肉だなって思ったんですが、一理ありますよね。そこでちょっと質問が遠大で恐縮ですけど ―陳腐な哲学の枠に必ずしも収まらない会社のオーナーとしての見解を伺ってるんじゃなしに― 真実をコモディティ(売買品)にすることは公共の利益を損なうとお考えですか?
Nick: 僕ごときに答えられるか。レター出たよ
*メグ・ホーリハンはニック・デントンとKinja共同創設後、Twitter現CEOエヴァン・ウィリアムズと一緒にPyraLabを共同創設し、Bloggerをブレイクさせた「ブログの母」みたいな人。ピーター・ロハスはニック・デントンの指揮下でGizmodoを創設後、AOLに引き抜かれてEngadgetを創設した初代編集長。
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