Murakami defies protests to accept Jerusalem prize (c) Reuters, Baz Ratner
Haruki Murakami made a powerful "Egg and Wall" speech at the 24th International book fair in Israel on February 15th, explaining his controversial decision to accept Jerusalem Prize while Israel is still at war. Back in Japan, the mainstream media reported as if Haruki expressed his strong objection against Israel, but his speech (full scripts) doesn't specify who's the Wall. To me it sounds more like a warning from a post-war generation.
"Egg and Wall" has always been the main theme in his literature. Rather, what caught my attention was this rare recollection of his father who was sent to China during WW2, joining the invading force of Imperial Japanese Army. ;
"My father died, and with him he took his memories, memories that I can never know. But the presence of death that lurked about him remains in my own memory. It is one of the few things I carry on from him, and one of the most important,"I wonder how many in the audience realized a magnitude of the implication; he's telling them how it's like to be an invader's son. This reminds me of his 1995 novel "The Wind-Up Bird Chronicle" which revolves around the 1939 massacre of Japanese troops by Soviet soldiers in the Mongolian desert of Nomonhan.
In 1994, Murakami visited the Nomonhan site, where spent cartridges and shards of helmets from the battle still can be found. "I felt as though I had experienced the battle myself," he told Ian Buruma. "I wondered what I would have done if I had been a Japanese living in 1939." [...] "The most important thing is to face our history, and that means the history of the war," Murakami told Buruma. "People talk about the atomic bomb, but they don't want to talk about the massacres in China--I think I have a responsibility for those things," he told Harper's Bazaar (March 1993). - via Ilusão da Semelhança
Haruki revealed Ian Buruma off-recordly that his father once told him some really disturbing war experiences, saying "it may be the reason why I still can't eat Chinese food." Totally horrified, he was too afraid to ask further questions. Later Buruma put it into print, and Haruki was so furious that he demanded her to take down. (source)
An Egg can be turned into Egg Crusher by the System. Then the Egg has to carry all the lives it's taken for the rest of its life. And it doesn't end in one generation.
The Wind-Up Bird Chronicle in Israel /イスラエルの『ねじまき鳥クロニクル』
(via The Book Design Review)
村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチ(全訳、原文)を遅まきながら読んだ。これはイスラエル批判と言うより、侵略者の次の世代からの警告ではないかと思った。
「壁と卵」は氏が文学でずっと取り組んでるテーマだが、演説では、滅多に語らない父親の話が目を引いた。氏はこれを語るため制止も誤解も恐れず行ったんじゃないか。
氏の尊父は院在学中に陸軍に召集され中国の戦地に赴いた。要は侵略側。今のガザのイスラエルと同じである。
「父は亡くなり、彼が抱えていた記憶も消えました。もう僕には知る術もない記憶です。でも父の周囲に影を潜めていた死の存在は、僕の記憶に今も残ってます。父から受け継いだものは数えるほどしかないんですが、これはそのひとつ。一番大切なもののひとつです」(スピーチ試訳)
システムは卵を卵潰しに変えることもできる。卵は奪った命を背負って生きる。それは、ひとつの世代では終わらない。
中国というと『ねじまき鳥クロニクル』のノモンハンの皮剥ぎに連想が行ってしまうが、あの執筆の折、氏はこんなことを漏らしている。
この執筆に当たり村上春樹は1994年ノモンハンの戦場跡を訪れ、弾薬やヘルメットの破片が今に残る現場を見た。「まるで自分で戦争を体験しているような気分になった」と、氏はイアン・ブルマ氏に語った。「もし自分が1939年の日本人だったら何をしていたんだろう、と考えてしまった」、「一番大事なのは歴史に向き合うこと。そしてここで言っているのは戦争の歴史のことだ」。
Harper's Bazaar1993年3月号では「みんな原爆の話はするけども中国の大量虐殺の話はしたがらない。―僕には、こういったことを語る責任があると思う」と述べている。(Ilusão da Semeより)
海外の反応
(1)Publishers Weeklyより抜粋;“卵と壁”のメタファーは氏の立ち位置に何の疑念も残さなかったが、会場には最近のガザ攻撃に関し村上にもっと突っ込んだ明確なイスラエル批判を期待した人もいたようだ(他の大勢の作家、最近ではAmos Ozがやったように)。充分踏み込んだと見る人もおり、スタンディングオベーションは大体半分で、残り半分は石のように静まり返っていた。[...]
村上はすぐ会場を出てしまい、直に話せる機会を楽しみにしていた文学仲間の期待に水を浴びせた。参加者の非公式の溜まり場American Colony Hotelのバーにも姿を見せず、それも失望に追い討ちをかけた。きっと賞金2000ドルでは飲み会にワンラウンド顔を出すほどのこともないよと、誰かに吹き込まれたんだろう。(試訳。英ガーディアンには「賞金1万ドル」とある)
(2)イスラエル在住・漂流博士さんのルポ 現地は村上春樹フィーバー。会場で直に聞いた人には“イスラエル批判”にはきこえなかった。「You are the biggest reason why I am here/何よりもみなさんがいたからここにこうしてきたんです」という言葉もあっただけに、翌朝の日本の報道には「引っくり返りそうになった」。
(3)Haaretz.com (イスラエル最古の新聞ハーレツ)講演全文のコメント抜粋;
1. 村上氏へ、卵からひとこと(哲学者)
第1に、ようこそ。第2に、文学は巧妙な嘘という貴方の言い方には賛同し兼ねます。嘘とは定義上、悪意の欺きを含むものであるのに対し、文学は空想であって、そこに悪意はありません。残念ながらTVの国際放送で最近貴方が耳にされているイスラエル情勢の多くは実は捏造で、フィクションとさえ呼べないものです。貴方はイスラエルが壁で、パレスチナ人は卵だと仰る。それも私たちが戦車を持っているからという、たったそれだけの理由で。どうも貴方はパレスチナ人が世界で10億人を超えるイスラム人口の一員であることをお忘れのようですね。彼らの多くは可能でありさえすればイスラエルを根絶やしにしたいと思っているのです。さらにまた形勢が逆転し、戦車がパレスチナ人の手に渡れば、中東に卵(ユダヤ人)などひとつも残らないということもお忘れのようです。私たちが築いた壁は、外で待ち伏せする狼から、まさに私たち卵を守るためのもの。テロリストが自分たちの卵を盾に利用しなかったら、卵が割れることもなかったのです。 敬具
2. The System and the Eggs(Richard, 米テキサス州)
壁: 過激派。そのイマーム(イスラム指導者)とリーダーは、誰を嫌うべきかも知らない幼子に嫌悪の心を教え、武器をとり爆弾を自分の体に巻きつけ、社会を築くより他者を殺すことに専念するよう誘導する。
卵: (殉教する子どもを誇りに思わず)子どもを育て、家を築き、畑に水を引き、平和に暮らしたい、それだけを願う罪なき市民。
全ての壁が悪で、全ての卵が善と前もって分かるような人はみな、壁と卵を正しく見分けたかどうかよく確かめた方がいい。この小説家はまるで逆だ。正誤を判断すべき重要な問題に“全部ワンサイズ”のキャッチーなフレーズ考えるより、事実を分析すべき。
3. 4. 村上ファンからのサンキュー。#1、#2に対し「彼の本読んでから書こう」
5. #1発言者に「よくぞ言った」
6. Murakami(Ruth Brandt、ビバリーヒルズ)
なんで僕たち、自分の足を自分で撃つような真似続けてるんだろう。公の場で僕らを非難する人たちをわざわざ招いたりして― 彼らにはこれまでいくら払ったんだい? 100万ドル??? だったらもういいから、彼には卵になってもらって、残りのアジアに壁になってもらって、その上で彼の言ってることがどれだけ正しいか、とっくり見させてもらおうじゃないの。彼のようなの招いて恥晒しもいいところだよ。―こんな馬鹿なんじゃ馬鹿にされてもしょうがないけど!!!
7. Like Quixote tilting at windmills(FedUp、バルセロナ)
この人の書く本は中毒になる面白さかもしれない。それは疑わないんだけど、“壁”と“卵”に世界がきっぱり二分できるという間違ったオントロジー(存在論)を土台にした物語なんて、夢中になる価値ない。#1が言うように、戦車を動かす人だって、それなりに脆い存在なんだ。その彼らに“壁”というラベルを十把ひとからげに貼って人間性を否定し、あたかも“システム”という名の邪悪な怪物の一部のように扱う。これは自分勝手なモラルの腐った土台に騎士道の薄っぺらなビニールを上塗りする行為に等しい。
この数年、Sderotで何が起こってきただろう? ガザ市民はシステムという怪物を前に絶望に駆られるあまり自分たちを取り囲む壁に卵を投げつけたが、それ以外に選択肢は残ってなかったとでも? 卵が落ちてくる逆サイドの人たちは爆弾シェルター(“壁”ですかね)に避難した。これでも飛んできた方の卵は割れる以外なかったの?
村上さん、壁だけで卵は割れないんですよ。卵を投げつけてくる誰かがいない限り。
8. wall & eggs(JR、アムステルダム)
傷ついた民間人が卵で、イスラエルの戦車・爆弾が壁…としか考えられないのは、ちょっとアレかな。大きなイスラムの壁に包囲された“イスラエルの地”という小さなバスケットに入った卵がイスラエル人だと、考えてみたことはないんだろか? ここで重要なのは裏づけのある事実だけ。フィクションは無しにしよう、ミスター。 オランダより
Kafka on the Shore in Israel/イスラエルの『海辺のカフカ』
(via The Book Design Review)
(4)Jerusalem Post(イスラエル日刊英字紙エルサレムポスト)のコメント抜粋;
2. It is good(Sugihara, Japan)
J PostはHaarezよりずっといい。村上はイスラエルに反対だったのにも関わらず、その彼が言ったことをそのまま紹介した。
4. どっちが先? (Amir)
村上には鶏と卵と壁、どれが先か説明できるのか? 壁が鶏・卵の産物なら、壁も私たちの一部。私たちの存在の一部としてあるべき存在なのでは?
5. 身の安全を護るため身を寄せ合ってぶら下がってる脆い卵が壁で、ぶつかってくる方の卵に爆弾や榴散弾が入ってることもある(Sau)
『アンダーグラウンド』の取材・執筆をした村上なら、それぐらい分かるんじゃないの? オーム真理教事件のサバイバーの集会でも、こんな風に訓示を垂れるのか? 村上が人間の魂に投じる光は自分が思っていたほど明るくもなく、心に染みるものでもない、それが今頃になって分かったよ。彼の作品はまだ好きだし読み続けると思うけど、これからは彼の本と自分の心を直接繋ぐ道に、ちょっと苦みが差しそう。
6. Murakami II (nehama purta, Israel)
村上の受賞メッセージは考えうる限り最悪のテイスト。特に、主催国の正当な批判さえ全力で回避する日本文化の一員というところがね。イスラエル賞受賞者としては別に異例のことでもないけど。そもそも受賞者の選考委員会が職務怠慢なんだよ。傍目にはまるで受賞予定者にこの種の無作法で敵意に満ちた振る舞いを求めてるような節もある。これは誰かが真剣に反省しなくては。一体誰がこんな委員選んだのよ?
7. prize(Yosef, Israel)
どんな“芸術的”な言葉で言い表そうと、モラルの相対主義は精神破綻の現れだ。今もこれからも。それより悪いのは彼がハマスの“壁”に何らの落ち度も認めてないこと。さらに最悪なのは、ハマスの壁なんか見てもいないってことさ!! 随分と才能に恵まれたブラッファーもいたもんだ。― よりによって彼に賞をあげたの???
(5)Salon(米サンフランシスコのリベラル系オンラインマガジン)コメント抜粋;
1. Salut!
なんと勇気ある素晴らしい言葉。ありとあらゆる場所にいる"卵"より。チアーズ。おめでとう! (Brian Stegner, 米ミネアポリス)
2. (ユダヤ人)入植地近在でそれは言わない方が身のため
こんなこと言って入植地界隈を出歩くと、"Rabin"(訳注:パレスチナ和解を進め、アラファト議長と一緒にノーベル平和賞をとったが1995年暗殺されたイツハク・ラビン元イスラエル首相)にされるぜー。イスラエルでは壁は無数にあって増える一方だ。卵にとって良い場所ではない。(Jason Wolfe, Newhall)
3. システムに魂はない。そのシステムを作ったのは我々
記事のタイトルとリードは要・書き直し。村上ははっきりと革命を宣言している。ジョージ・オウエルとアルドス・ハクスレイの声で。激動前の静けさで、意識と思考に抜本的変革を求めている。我々の本質、我々の魂がそれを求めている(kernelmaize)
4.5.賛辞。感銘。
6. アキラ・クロサワは言った。「アーティストたるもの目を背けてはならない」
アーティストとは何か。それを君、ハルキ・ムラカミは身をもって体現してくれた。政治的なことは薄い表層であって、その下にはみんな分かり合えるヒューマニティがある。“他者”の懐に飛び込む勇気さえあれば。サンキュー。(bquick)
7. 影響
アメリカ人作家じゃなくて良かったね。彼がアメリカ人なら出版契約は二度と結べないだろう。シオニスト(ユダヤ主義者)は東アジアのメディアは支配していない-まだ。だからこうしてメインストリームの人が権力者に本当のことを言うチャンスも、残っている。
8. 自分のこととして関わる仏教徒の視点
システムを作るのは我々。我々はシステムを変えることができる。ゆっくりでも、一人ひとりが自分の責任を引き受けることによってのみ、それは可能だ。村上さんの話は、自ら関わる仏教徒の行いの真ん中を突いている。イスラエルによるパレスチナ攻撃、米国によるイラク&アフガニスタン攻撃を取り巻く問題には終りはない。死の商人は両方から利益を得ている。が、これは各自が責任を全うすることによってのみ変わる。我々は卵にもなれる。壁にもなれる。その中間はない。正式な停戦合意までイスラエル全面ボイコットは支持するし、パレスチナ人には人道的な物資・サービス(および国際協定の国境線)の保証も必要だが、村上さんがエルサレムに行ってこのような話をしてくれたのは嬉しい。彼は非暴力の解決策があると信じる我々みんなのために、語ってくれた。(Poetagainstwar)
―中締め。また興味深いコメントがあったら追加していきますね。
Well, it sounds like Japanese are living in an eutopian flower field. Comments in Japanese blogs that introduce his speech are praising him. I think I was certainly one of them when I was in Japan, now in US I am rather on the side of the non-Japanese peoples' opinions against Mr. Murakami as you show here. Or It may be that some arts are non-realistic, and that kinds of arts never thrives in US where people are very practical and realistic.
ReplyDeleteThe real motive is anybody's guess. It amazes me how each and every one of our views is based on (and limited to) his/her own ethnic origin and nationality.
ReplyDeleteYou're right. Japanese media should know how their all-out praise to their Murakami is, in fact, putting him in an ambivalent situation.
All said, I'm still not sure whether Haruki identifies himself as an Egg. Maybe not.
Some say that Haruki doesn't have a child because that's the only way he could put an end to the dark wartime memory that his father handed down to him.