What I Learned From Steve Jobs
BY Guy Kawasaki-in Japanese
スティーブ・ジョブズから学べる教訓を解説する人は数あれど、同じ屋根の下で直に彼と働いた経験者はほとんどいない。取りこぼしたり忘れたりしないよう、僕がスティーブ・ジョブズから学んだ教訓のTOP12をまとめておこう。
1. Experts are clueless
エキスパートはなんにもわかっちゃいない
Daisy Wheel for Xerox & Diablo printers |
だいたい1980年代半ばあのエキスパート連中は「Macintoshのニ大欠点はデイジーホィールプリンター専用ドライバとLotus 1-2-3がないことだ」なんて言ってたんだからな。あと「Compaq買え」なんて傑作な助言するエキスパートもいた。エキスパートの言うことに耳は傾けても、毎度真に受けないことだ。
2. Customers cannot tell you what they need.
客は自分に何が必要か教えちゃくれない
「Appleマーケットリサーチ」というのは自己矛盾語で、アップルのフォーカス・グループはスティーブの左脳に話しかける右脳なのだ。客にどんなもの欲しいか訊いてもきっとこんな答えが返ってくるだろう、「もっと良くて、もっと速くて、もっと安いもの」—それって同じもの良くしただけ。革命的チェンジじゃないからね。お客というのは自分が既に使ってるものの文脈でしか欲望を語ることができない。—Macintosh発売当時も人はみな「もっと良くて、もっと速くて、もっと安いMS-DOSマシン」が欲しいと口を揃えていたものだ。一番リッチな金脈掘り当てたかったらテックのスタートアップは何はさておき自分が欲しいもの掘り当てなきゃいけない。—スティーブとウォズがやったのは、まさにそれだった。
3. Jump to the next curve.
先のカーブまで飛び越えろ
同じものを改良しても始まらない、大勝利はその一歩先まで飛び越えて初めて起こる。最高級のデイジーホイールプリンターが新フォントをより多くのサイズで導入する方向で励んでいた頃、アップルはその一歩先まで飛んでレーザープリンティングを導入した。これは採氷業者、製氷工場、冷蔵庫メーカーというぐらいの違いがある。Ice 1.0、2.0、3.0。君なら冬場、凍った池から氷を切り出したいなんて思うか?
4. The biggest challenges beget best work.
最大のハードルが最高の仕事を生む
僕は恐怖の中に生きていた。スティーブにいつ自分や自分の仕事をボロクソ言われるか戦々兢々だった。みんなの見てる前で言われたら終わりだなって。この恐怖が自分のハードル(困難、課題、チャレンジ)だった。IBM、マイクロソフト相手の競争も大きなハードルだった。世界を変えるのも大きなハードルだった。僕もAppleの先輩も後輩もベスト尽くして働いたのは、ベスト尽くして働く以外こうした大きなハードルに立ち向う術がなかったからだ。
5. Design counts.
デザインは大事
スティーブはデザインの要求が高く、みんな気が狂いそうだった。—ブラックのこの影が薄すぎるとかなんとか言ってね。先ゆきない人はブラックはブラック、ゴミ箱はゴミ箱としか考えない。その点スティーブは完璧主義者だった。本当にマッドマックス/Beyond Thunderdormってぐらいの完璧主義さ。それはでも正しいことだった。世の中にはデザインにこだわる人も確かにいるし、多くの人は少なくともデザインを肌で感じている。全員じゃないにしても、重要な人はそう。
6. You can’t go wrong with big graphics and big fonts.
写真とフォントはデカいの使っとけば間違いない
スティーブのスライドを見てごらん―フォントは60ポイントで、大きなスクリーンショットとか写真が1枚あるだけだ。他のハイテク講演者のスライドを見てごらん(スティーブのプレゼンを生で見た経験者も含めて)―フォントは8ポイントで、写真もない。これだけ沢山の人がスティーブの新製品発表の腕は世界一だと言ってるのに、なぜもっと沢山の人が彼のスタイルを真似しないんだろう、不思議じゃない?
7. Changing your mind is a sign of intelligence.
心変わりは頭がいい証拠
アップルがiPhoneを初めて出した時にはアプリは入っていなかった。アプリなんて入れたら最悪だぜ、ありゃ自分の携帯に何するかわかったもんじゃないからな、とスティーブはバッサリ斬った。だからSafariのウェブアプリでってことになったのだが、半年経ったらスティーブはコロッと気が変わって(それか誰かが説得したのかもしれない)、やっぱりアプリで行こうぜーってことになった。ダ~! かくしてあんなにSafariのウェブアプリ、ウェブアプリと粘ってたアップルは突然手のひら返したように態度を変え、今では「there’s an app for that(それアプリありますよ、CMで多用)」の会社なのである。
8. “Value” is different from “price.”
「バリュー」と「値段」を混同するな
なんでも値段で決める人には耳の痛い話だね。値段だけで競争してる人にはもっと耳の痛い話だが…物事は値段がすべてではないのだ。—大事なのはバリュー(少なくともそういう人はいる)。バリューとは即ち、トレーニング、サポート、人が創る最高のものを使うことに内在する喜びまでトータルで含めた価値を指す。アップル製品を安いから買うって人はたぶんいないだろう。
9. A players hire A+ players.
AプレイヤーはA+のプレイヤーを雇う
実言うとスティーブは、AクラスのプレイヤーはAクラスのプレイヤーを雇う…つまり自分並みに優秀な人間を雇う、と言っていたのだけど、これは僕がちょっと色をつけてみた。個人的に、Aクラスのプレイヤーというのは自分を超える能力を持つ人間さえも雇える人のことを指すと思うんだよね。無論Bプレイヤーは自分が優越感に浸りたいからCプレイヤーを雇う。CプレイヤーはDプレイヤーを雇う。最近Bプレイヤーの人間雇ってるなあと思ったら、スティーブが「bozo explosion(無能の連鎖。無能なトップが無能な人間を雇って会社がねずみ講式に無能だらけになる現象)」と呼ぶ末路が会社に訪れる前兆と思うこと。
10. Real CEOs demo.
真のCEOはデモできる
スティーブ・ジョブズはpodもpadもphoneもMacもデモしてみせた。年2~3回、それも何百万人という人が見守る中で。ところが製品デモとなると部下のエンジニアVP呼んでやらせるCEOの多いこと多いこと…あれは一体なんなのだ? チーム一丸となってがんばってるところを見せたい、のかな。かもね。だけどもっと考えられるのは、「このCEOは自分の会社が何作ってんのかもよく分かってないから説明もロクにできないんだな」ということ。なんと情けないことよ。
11. Real CEOs ship.
真のCEOは製品を世に出せる
あれだけ何から何まで完璧主義な割にスティーブはちゃんと製品を世に出せる人だった。毎回完璧じゃないにしても、ほぼ毎回出荷の及第点クリアできる程度には良い製品をつくった。 ここから得る教訓、それは「スティーブがアレコレいじくり回すのが目的でいじくり回す人ではない」ということだ。彼にはゴールがあった。ちゃんと製品を世に出し、既存市場の国際支配や新市場の創生を達成するという目標がね。アップルはエンジニアが主役の会社であって、研究が主役の会社ではない。アップルとゼロックスPARC、君ならどっちになりたい?
12. Marketing boils down to providing unique value.
マーケティングは他にないバリューを見せられるかどうかが勝負
ここに2列 x 2行の表があるとしよう。縦(列)は「自社製品が競合とどう違うか」、横(行)は「自社製品のバリュー」だ。右下はバリューはあるけどユニークじゃない製品―価格が勝負だ。左上はユニークだけどバリューがない製品―今存在しない市場を自分のものにできる。左下はユニークでもないしバリューもない製品—それ売るあんたはパー。 右上はユニークでバリューのある製品―ここならマージンも金も歴史も作れる。例えばiPodはユニークでバリューのある製品だった。なぜなら音楽レーベル大手6社から合法に安く簡単に楽曲ダウンロードできる方法は当時あれしかなかったからね。
Bonus: Some things need to be believed to be seen.
(おまけ)世の中にはまず信じてもらって初めて実現できることもある*
カーブをひとまたぎに越え、エキスパートの言うことに楯突いたり無視して、大きなハードルに立ち向かい、デザインに病気なほどこだわって、ユニークなバリューを追求するんだから大変だ。黙っていても誰も理解してくれない。自分の努力が実を結ぶとこ見たかったら、君も自分のやってること人に信じてもらえるよう自分から説得に駈けずり回らなくちゃならない。Macintoshも信じてくれる人たちがいなければ実現しなかった。iPodもiPhoneもiPadも然り。みんながみんな君を信じてくれるとは限らないだろうし—それで全くOKさ。ただ世界を変えるにはまず数人の心を変えるところから始めなくちゃならない。それが僕がスティーブから学んだ一番の教訓だね。
*「Seeing is Believing(人は目で見たものしか信じない)」の敢えて逆を言っている(thanks, max)。ディズニー作品で「大人は目で見るまで信じない(Seeing is believing)、だけど子どもは信じるから見える(Believing is seeing)」てな感じでよく使われる。
[What I Learned From Steve Jobs - Guy Kawasaki]
こんなに心に染みながら軽快に学ぶ言葉は他にない!! 一生忘れられません。
ReplyDeleteいや~ほんと多忙な人の心にもスッと入って
ReplyDelete絶対忘れ去られてしまわないように
頭に蝋燭2本立てて連日連夜削りに削った感じですよね、ガイ・カワサキ。護摩も焚いてたかもしれない。
というぐらいジョブズ乗り移っとるわい…な見事な原文で、それがまた…うう…
この言葉が肝に染み渡れば、
ReplyDelete日本企業も変われる気がします。
こんにちは。
ReplyDeleteツイッターでこちらのブログを知りました。
Memberに入れさせてくださいね。
この記事、とても興味深いです。
素敵なガイ•カワサキ氏の記事をシェアしてくださってありがとうございます!
ReplyDelete余計な横やりで申し訳ないのですが、気になったので失礼します。Bonusの訳がやや逆になっているような気がしまして。ニュアンス的には、『世の中には、先ず信じてもらってこそ実現できることもある』(Seeing is believingの逆で)なのではないかと....?
"People needed to believe in Macintosh to see it become real"という原文は、Macintoshというアイディアとデザインの方向性を信じた人たちがいなければ実現しなかった、という意味では?(でも、全ての人が信じるわけではないけれど、出発点は一握りの人々のマインドを変えることから始まる、と続くような。)
長くなってしまって申し訳ありません!ともあれ、市村さんのポストのおかげで彼のエントリに遭遇できました。ありがとうございました。
あわわ、ほんとだ! seeing is believingの反対になってますね…そっか…直します直しますありがとうございます!
ReplyDeleteいやー、よくぞ訳してくださいました。早速facebookで紹介。
ReplyDelete' focus group' はマーケター用語で、日本語でも「フォーカス・グループ」だけど、うん、たしかに説明しずらい。少人数グループを集めてあれこれ聞くわけだけど、それがAppleだと、スティーブの右脳と左脳ってわけですね。
あ、のぶさん、ありがとうございます、直しました!
ReplyDelete結構この最後の誤訳はボディーブローだったのです。文章見えてるのに見えてなかった…orz…
あー自分は人にもっと信用してもらえるように頑張んなきゃいけないってメッセージだなーって思いました
遠くから、時々お邪魔しています。(コメント残すの初めてですが。)偶然遡って読ませて頂きましたが、本当に大切なこと言ってますね。ますますジョブズ氏に傾倒しそうです!
ReplyDeleteはじめまして、小林と申します。この文章、和訳ありがとうございます。facebookへシェアさせていただきました。
ReplyDeleteGreatt reading your post
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