シリコンバレーのトリビア22:Silicon Valley Trivia Quiz 22

Q:
What's the title of Japanese novel
whose author conceived the story
while staying in Silicon Valley?
シリコンバレー生まれの日本の小説は何?


There are a ton of books written about Silicon Valley,
but this one is not about Valley.
The author stayed here when s/he heard a story
about a guy who'd soon become this novel's main character.


ヒント-1: バレー滞在中にストーリーを「授かった」という設定

ヒント-2: 以下のようなモノクロの印象的な写真がところどころに入っている

ヒント-3: 一読しただけでは実話か創作か分からない

ヒント-4: 長過ぎる前置きがクリアできた人は止まらなくなる

ヒント-5: 恋愛小説


(courtesy of the author's web)





A:



A Real Novel by Minae Mizumura
水村美苗「本格小説」



Mizumura's third novel dubbed as a contemporary Japanese version of Wuthering Heights. One day, a young Japanese editor turned into IT professional in San Jose visits Mizumura's seminar at Stanford, asking if she knows anything about a multi-millionaire, Taro Azuma. She tells her account of Taro who used to work for her father's office in NY some decades ago and he tells what he heard from those who knew Taro in Japan, thus the story gets unfolded. - After the really long prologue, you can hardly put it down. A true page-turner.



「実在の人物がベースらしいわよ」とパロアルトの友だちが貸してくれた本。友だちは著者の友だちの友だちだから、私は3次の他人ね。



序章でいきなりパロ・アルトが登場。ある青年がネットで日程調べてスタンフォード大の水村美苗氏のセミナーを訪ねてきたところからNY-軽井沢、二つの時空を隔てた物語が始まる。この嵐に閉ざされた夜に天から「物語」が舞い降りてくる場面の描写が、とてもいい。



1998年と言うと私がここ来たのがその年の2月20日で、来る日も来る日もエルニーニョの雨だった。本の導入部の記述が実話なら水村氏は同年1月から日本の桜が散る季節まで客員でここにいたことになる。上巻p.133には、青年に会うまでは「3冊目の小説となる筈の思い出話」を縦書きで書いていたが遅々として筆が進まなかった、とある。



さて、実はここに水村氏がスタンフォード大で同年2月17日(火)に行ったセミナーの案内が残っているのだ。案内には「現在は現代日本に舞台を移した嵐が丘のような小説を執筆中」とあるから、このセミナー開催の頃にはもう青年に会って「思い出話」から「嵐が丘」にシフトチェンジしてないとおかしい。実話ならね。

本の中で青年は氏の作品は「二冊とも読みました」と言う。「続・明暗」(1990年)と「私小説」(1995年)は読んだが、「手紙、栞を添えて」(1998年2月出版)はまだ…。ということは1月か2月はじめ…? 

また、2人が夜通し語り明かしたのは金曜のセミナーの後という設定で、その夜は「カリフォルニア北部を数十年ぶりで襲った大雨で死傷者も出た」(上巻p.167)という有力な手がかりがある。現実はどうかと調べてみると、ここに「2月2日から3日(火)にかけて記録的豪雨が北加を襲った」とあり、それだと曜日が合わない。む~。

主人公「東 太郎」(実名という設定)の線はどうかというと、下の名前が「東太郎」という方は世の中五万といて、まさに先日ご紹介の「un-Googleables」状態。結局、どこまで実話でどこからが創作かは、私にもよく分からない。

因みに、足軽の養子に出され、藩命で留学し、サンフランシスコ&オークランドで奴隷扱いされて帰国した元祖バイリンガル総理の高橋是清(没年・1936年)は変名を「東 太郎」という。17歳で芸者に入れあげて置場の名前「東」で唐津に英語を教えにいったというから昔の政治家って、すごい(唐津の旅館「洋々閣」女将の日記より)。


[Minae Mizumura's Web]




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