バージニア工科大乱射犯チョ・スンヒが残した脚本:Cho Seung-Hui's Plays



今朝からヴァージニア工科大乱射事件を更新しているが、先ほど乱射犯チョ・スンヒ容疑者が脚本クラスの課題で出した脚本2作品がAOLニュースに公開された(詳細は末尾)。提供者は元クラスメートで現AOL勤務イアン・マクファーレン(Ian MacFarlane)さん。事件の感想をこう述べている。

昨日ヴァージニア工科大で乱射発生と聞いてまず思ったのは友だちのこと、次に考えたのが「絶対Seung Choに違いない」 ということだった。

Choとは昨秋、脚本のクラスで一緒だった。最初は誰もそんな彼のことは気にかけてない様子だった。一人になりたがり誰ともあまり口をきかない。実際、彼の声は聞いたことがないと思う。すごくおとなしくて自分の世界なんだ。今思うと“スクール・シューター(校内発砲犯)”のステレオタイプにそっくり当てはまるやつだった。-孤独で、暴力に憑りつかれていて、人格にかなり問題がある。-クラスには仲良くしようと話しかける人もいたけど、彼は口をきくのを拒んでいた。まるで誰とも友達になりたくない風だった。友達の女の子がハロウィーン・キャンディをあげようとしても、ゆっくり首振って断っていた。毎日ただ授業にきて期限通りに課題を出す人、というのが僕の理解だ。

脚本のクラスは友だちと作品レビューし合うのがメインのパート。ひと幕書きあがるごとにBlackboardというオンラインのレポジトリに投稿してクラスのみんなで読んで翌日クラスで感想を出し合うんだ。授業では脚本について学生が感想を述べ、どこをどうしたら良くなるかアイディアを出して、教授が洞察を述べ、そして書いた本人にコメントさせる。

チョの脚本をみんなで読んだ時には、まるで悪夢だった。そこに描かれた暴力は無茶苦茶屈折して死を思わせるものなんだ。僕なんかの頭では到底考えも及ばないようなものが凶器に使われていた。その日チョが教室に来るまでクラスのみんなは、あいつ、ひょっとしてスクール・シューターになるんじゃないか、と本気で心配したものだ。僕なんて拳銃もってやつが入ってきたらどうするかシナリオ書こうと思ったぐらいだ。それほどあいつのこと考えると正気ではいられなかった。授業でレビューが始まった。みんな、やつが切れないよう言葉遣いにはものすごく気を遣った。教授の方まで、あいつには終わりのコメントを無理にとは言わなかった。

乱射があったと聞いて、友だちにFacebookからメッセージを送ってSeung Choのことなんか聞いてないか、まさか事件に関与してんじゃないかと聞いてみた。彼からの返事はこうだった。「おー、俺も今まったくおまえと一緒のこと考えてたとこだぜ! いや、やつのことはなにも聞いてない。けどよ、マジで、犯人がアジア系って聞いて真っ先にそれ考えたさ」

チョのことを“知って”から僕はずっと、なんか自分にできることがあったらどんなにいいだろうと思っていた。でも、何も思いつかなかった。警察に通報する手もあるけど、「ちょっとちょっと!コイツやばいっすよ!調べた方がいいっすよ!」なんて言ったって誰も取り合ってくれないだろう。そうじゃなかったら、やつにヘルプがいくよう、やるだけのことは絶対やったと思うし、そうしていたら昨日の悲劇は避けられたはずなんだ。

脚本公開に当たっては最初ためらいもあった(違法かどうか分からなかったし)。でも事件を調べている普通の人に自分の身を置き換えてみると、犯人のことはどんな些細なことだって知りたいと思うだろうし、こんなことに人を駆り立てるものの正体を突き止めて今後の再発を防ぎたいと思うだろう。これが、どんな変なやつでも放っとかないで他人をもっと思いやるキッカケになれば、そう願っている。アテンションを求める叫びの一種だとしたら、とっくの昔にアテンションなんて与えられていなきゃおかしいんだ。

昨晩ベッドに向かう時、最初に死亡が確認された被害者の一人が仲のいい友人のスタック(Ryan Clark)だった。彼と二度と話ができないなんて信じたくなかった。 彼との友情がどんなに自分にとって大事なものか、どこまで彼に伝えられるのか、そればかり考えていた。Ryanとは僕が3年のとき、別の友だちと3人で火・木はいつも一緒に朝食を囲んだものだ。それが1日で一番楽しい時間だった。しゃべり出すと永久に止まらないやつで毎度僕らを笑わせてくれた。 いい友人だった。僕だけじゃない、みんなにとっても。本当に寂しくなるよ。

-作品紹介

「Richard McBeef」


登場人物
少年John (13)
母親Sue(40)
その再婚相手Richard(40)

あらすじ
実の父親をひと月前にボート事故で亡くした少年は、Richardが父親を殺して母親と結婚したと思い込んでいる。「Dad」ではなく「D*ck」と呼び、「俺にこのリモコン~~に入れてもらいたいのか? そんな価値もないくせに。これ5ドルもしたんだぜ」など挑発、Richardが手を振りあげたところで母親が帰宅、「何するの」と息子をかばう。

「ただ話し合おうとしただけさ。[...]なのに返ってきた言葉はサンノブアビッ...」とRichard。「私のかわいいJohnちゃんがそんな言葉口にするわけないでしょ」と遮る母親。すかさずJohnが割り込んで、「俺の大事なとこ触ろうとしたんだ!」。嘘を真に受けRichardの頭を何度も殴る母親。反撃しかけるRichardに台所の皿を投げつけ地下に逃げ、床のパイプ、レンチを投げつけ荒れるが、「父親の死を乗り越えるのに時間が要るだけさ。さあ、上に行って~~で~~しよう」とRichardが誘い丸く収まる。

上階では息子が自室でダーツを投げつけている。顔は笑っているが、標的はRichardの顔だ。「殺す、殺す、殺す」。ひとしきりダーツに向かってRichardを馬鹿にすると地下に行き、「パパ殺したこの殺人デブ、ママが寝てるとき俺のこと虐待(性的)したんだよ」と口からでたらめを言う。また真に受けて今度はチェーンソーを振りかざす母親。車に逃げ込むRichard。

助手席にシリアルバー片手に乗り込むJohn。「やるしか能のない甲斐性なし」と、プロのスポーツ選手の現役を退いてから政府清掃員、トラック運転手、保育園児相手の教師、シェフ(「マクドナルドでハンバーグひっくり返すだけでシェフなら」)など最低賃金の仕事を遍歴し、ブクブクに太った社会的落伍者Richardの泣きどころを嫌味たっぷりに攻撃する。

「義理の父親に向かってなんという口のききかたをするんだ」と言うRichardの口に、「これでも食らえ」とバナナ味のシリアルバーを突っ込むJohn。悲鳴。とうとう逆上したRichardは少年に死の一撃を浴びせる。


「Mr. Browstone」


登場人物
高校生Jane(17)、Joe(17)、John(17)
担任教師Mr.Brownstone(45)

あらすじ
たむろする場所がない高校生の3人はカジノに偽IDで潜り込む。宿題2回サボるだけでDをつけ、家庭訪問にくれば電話線も引いてないと笑い、クラス中の男子学生相手に性的虐待を繰り返す担任教師を「old f*rt」、「m*thaf*cker」、「殺してやる」、「俺らキッズが血を流したみたいに奴が血を流すのを見てみたいもんさ」など言いたい放題していると「貴様ら人前でなんてこと言うんだ」、教師本人に見つかる。

スロットマシーンで500万ドル当て、舞い上がるJohn、抱き合う3人。

すると向こうから警備員2人を引き連れ担任教師が現れ、殊更に腰を曲げ、「あれは私のものです。私が当たったの見て、この17歳のやつら、私を突き飛ばして取り上げたんですよ。こんな未成年の不良がそもそもここにいること自体おかしいじゃないですか。(罵詈雑言)」と言って、まんまと当たりくじを手にする。罵倒しながら去る3人。タイトル「Mr.Brownstone」はGuns' N Rosesのソングタイトル*、と劇中にある。

*UPDATE: Guns' N Roses "Mr. Brownstone" Lyrics-訳詞(via 「14 Years」 )←リンク先の数字36はフリーメーソンのことらしい(滑ジイ、thnx)。う、う~ん…。

バージニア工科大乱射事件関連エントリ/ VT Shooting

Comments

  1.  狂ってますねぇ…。

     しかし、狂っている本人は、自分の狂気に気付けないようです。

     文章には、人格(※)がストレートに出ると私は考えていますが、彼が恐怖の虜であった事、そして恐怖から来る過剰な防衛、つまり他者への攻撃衝動に曝されていたことが、読み取れるような気がします。

    ※:その人がその時点で考えている事

     謹んで、犠牲者の方々のご冥福を祈りたいと思います。

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  2. これは「永遠の仔」の比じゃないです、とても8歳でアメリカ来た子が書く文章には思えない…。

    仮に生まれつきの狂気が存在するとして、しかし文章はインプットがないとアウトプットがないものですから…。これ以外に部屋からは大量に彼の残した文章が押収されたようなので、きっと何か手がかりが得られると思います。

    遺族からの集団民事訴訟を見越して、もう関係者(2005年に精神病院から退院させた病院側責任者、大学当局、ストーカー被害の通報受けて野放しにした地元警察など)の間では責任回避が始まってますよね。誰だってこんなの、責任取りたくないですよ。

    彼がドロップしなかったら自分が辞める、と言って彼を受け持ちのクラスから追放した詩のおばちゃま教授がTVでその理由を説明しようとするんですけど混乱して話の整理が全くついていないのが印象的でした。

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