生まれて初めてチョコ食べるカカオ農家の人:First taste of chocolate in Ivory Coast



- in Japanese

―年産約160万トン。ートジボワールは世界一のチョコレート輸出国だ。その主原料のカカオは、世界を乞食と飽食家に二分する一大産業である。

われわれ西洋人はチョコレートを食べる贅沢に恵まれている。が、コートジボワールのカカオ農家にそんな贅沢はない。


カカオ農家のアルフォンスさん「ココア豆は天日で干すんだよ、こんな風にね。これは間に合わせのラックさ。今回は収穫が少なかったから。キロ単価も最近あんまり上がってないし。生活は苦しいよ」

―アルフォンスさんの家は小さなカカオ栽培農家だ。豆は収穫するが、チョコレート作りはやっていない。

記者「この乾かした豆で何を作るか知ってますか?」

ア「正直、カカオ豆から何ができるかは知らない。僕はただ豆を育てて、それで生計を立てるので精一杯で。なんか旨い食べもの作るんだろうなっていうのは知ってるけど、実物は一度も見たことがないし、その話が本当かどうかもわからない」

記者「じゃあ、ひとつサプライズ。今ポケットにチョコレート1枚持ってんですけどね。これがカカオ豆でできる、例のものですよ」

ア「…チョコレートか?」
記者「そう。味見していいですよ。遠慮しないでもっと取って…」
ア「おお~旨い!」(1:30)
記者「気に入った?」
ア「うん、ものすごく甘い。カカオがこんな旨いものだとは知らなかったよ」
記者「食べたことないんですか?」
ア「ない。これが生まれて初めて」


―カカオの収穫は長年やってるアルフォンスさんだが、ブローカーに豆を売るばかりでチョコレートは見たことがないのだ。チョコに感動したアルフォンスさん、さっそく農家の仲間にも味見してもらいたいと言い出した。

ア「いいかみんな、よく聞けよ。このお客さまが世にも貴重な手みやげをもってきてくれた。天日で乾かした豆で白人はこれを作ってるんだってさ。触って回してみて」
友達「どれどれ」
友達「硬いな」
記者「こうやって四角く割って1個とるんですよ」
友達「ひゃーーーー甘っ!」
ア「これ食ってるから白人は健康なんだね」
友達「なんだっけ?」
ア「ショコラ(チョコレート)」


―チョコレートはコートジボワールでは高級品で1枚2ユーロもする。アルフォンスさんの日当はたったの7ユーロ。それで家族15人と労働者4人を養っている。ここがアルフォンスさんのプランテーションだ。カカオはこの日雇いの人たちと一緒に収穫している。

農夫「きれいな実だなあ」
農夫「大事なのは中の豆だろ(笑)」
農夫「そうさな、鞘なんか俺らにはどうでもいい」
ア「さ、豆を取り出そう」
農夫「がんばろうぜ、おー!!」

記者「何してるんですか?」
ア「豆にこうやってバナナの葉を被せてやると、早く発酵するのさ。あと乾燥に5日かかる」

―チョコレートはみな、この豆の山とバナナの葉っぱから始まる。が、やはりこのプランテーションで働く人たちも、豆のその後のことは誰も知らない。

記者「この豆なんに使うか知ってますか?」
農夫「育てるばっかりで、知らないよ」
記者「じゃあ、サプライズ。カカオ豆からできるのは、このチョコレートっていうものなんです。回して食べてみてください。おいしいから。白人も中毒なってるんですよ」
年長の農夫「俺らの豆で作ったものなの? ほんで、白人も好きなの? おいこら急かすなよ。ここは一番年長の俺様がまずは毒見してやらなきゃな。それにしてもこれ本当にカカオ豆でできてんの? 100%確か?」
ア「お客さんはそう言ってるよ」
年長の農夫「そうか。とりあえず食ってみるか」

若手農夫「うちの親はワイン作るのに使うって言ってたよ」
年長の農夫「ほんとだよな。みんなずっと輸入ワインはカカオ豆で作ってるって思ってたんだ。まさか他のもの作ってるなんて思いもしなかったよ」

記者「甘いでしょ」
農夫「鍋で炒ってるんか? どうやって作るの?」
記者「大きな工場で豆を炒って、すり潰して、粉と油にして、砂糖と牛乳を入れるんですよ」
農夫「このカカオ豆からか?」
記者「そうそう」
農夫一同「信じられねえな!!」

農夫「まさかお客さん、チョコレート食べてるから肌そんなに白いの?」
記者「いや…チョコレートは関係ないっす…」
農夫「ぶわっハハハー! なんだ~てっきりチョコのせいかと思ったよw」

年長の農夫「カカオ育てんのは重労働で文句ばかりだったけど、こうしてできあがったもの食べられるなんて、本当に俺ら恵まれてるよな(しみじみ)」

中堅農夫「この包み紙もらっていい…かな?  子どもに見せたいんだ」
ア「いいですよ。もう1個あるから」
農夫一同「うおぉおおーーーー!!!!!!!!」

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