ジェフ・ベゾスへの公開書簡:Open letter to Jeff Bezos by @geneweingarten

Dear Jeff,
Welcome to The Post. I have read that the $250 million you paid for this newspaper is roughly 1 percent of your net worth, making it about as risky and consequential a purchase for you as a used 2003 Honda Civic might be for me. Still, I hope... >> read more on WP, you won't regret.

拝啓ジェフ

ポストへようこそ。聞くところによれば君がこの新聞に払った2億5000万ドル(244億円)という金は君の純資産の約1%で、リスクといっても僕が中古の2003年のホンダCivic買う程度の微々たるものらしいな。それでも僕は君がこれをただの道楽だとか、(使い古しの雑な喩えで悪いが)もっと大きい会社の宣伝材料ぐらいにしか考えてないとは思えないし、思いたくない。額ははした金でも、君にとっては大きな賭けだろう。君はきっと腕まくりして従来の報道に財政的成功の道を探してくれる男だと思う。

1982年当時、僕がまだマイアミヘラルド日曜マガジン「Tropic」編集長だった頃、一度発行人にシルバーナイト大賞の記事を一面に持ってくるよう頼まれたことがある。マイアミ地区で最も将来有望な高校卒業生に毎年祭典で贈られる賞だ。賞自体は素晴らしく志の高い事業なんだが、いかんせん催しの運営・スポンサーはナイトライダーで、マイアミヘラルドの親会社だ。社モノに毛の生えたものなので紹介記事はどうしても無批判な自己PRどっぷりの提灯記事になってしまう。そこでTropic編集部のみんなで掲載は断った。編集部はまだ小さくて、気骨のある好戦的カラーを前面に打ち出そうとしてるところだ、そんな局面で大企業にべんちゃらゴマすりしてたら我々のプランが台無しだってね。そしたら発行人はカッと目を見開いて、業務命令違反がどうのこうのブツブツ言って、記事をよその、もっと目立たない欄に持っていった。我々は結局お咎めなしだった。
ウィキペディア読んでたら、あの年のシルバーナイト受賞者はなんと若き日のマイアミ・パルメット高校のジェフリー・ベゾスだったよ、ははは。

そんなわけで君と僕は若い頃ちょっとだけクロスしてるんだ。僕は君をボツにした。どっちの勝ちかは言わなくてもわかるよね。

そんなことよりこっからが本題だ。いいかい、ジェフ。あの記事を断った我々は正しかった。しかしもっと本当のこと言うと、我々に断らせた発行人が偉かった。あれに続く10年、Tropicは自由に社外の人と実験的試みを果敢に進めマイアミで熱狂的な支持を得て、記者・カメラマンはピューリッツァー賞を2回受賞、さらに2回最終候補に残った。それもこれも上の人たちが我々を信用してくれたからさ。嫌々でも、ちゃんと我々を後ろで支えてくれた(こっちがより重要)。

この図々しい部下も大目に見る上司の話をワシントン・ポスト伝説の名編集長、ハワード・サイモンズ*にしたことがある。彼が1990年にがんでこの世を去る直前だった。彼は笑って、それは自分が新聞運営に携わる者として普段から肝に命じている原則そのものだと言った。その原則とは即ち「Kick up, kiss down(上には蹴り、下にはキス)」。つまり上司は怒らせていい、しかし下の人間には好かれ尊敬されるようにしろ、というものだ。[...]

言うまでもなく君は優秀な実業家だ。ビジョナリーの呼び声も高い。この素晴らしいエンタープライズをどこに舵取りすべきか、君には曇りなく見えていることを切に願う。そしてそこに向かう途上でも、どうか「Kick up, kiss down」の心を忘れないで欲しい。

あとシルバーナイトのことは、悪かったな。でもあれで僕らは、正しかった。

*ウォーターゲート当時の編集局長。ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマン主演の映画『All the President's Men(大統領の陰謀)』にもなっている。彼のGOがなければ不正が表沙汰になることはなかった。

[Washington Post]

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