March 20, 2013

アンディ・ルービンがAndroidと別れた理由:Disconnect: why Andy Rubin and Android called it quits @verge

(c) Liz Hafalia, SF Chronicle

Disconnect: why Andy Rubin and Android called it quits

BY Adrianne Jeffries, Jacob Kastrenakes, Nilay Patel, Chris Ziegler, The Verge


- in Japanese

先週グーグルは2005年からAndroid共同開発者兼トップを務めてきたアンディ・ルービンが辞め新規極秘プロジェクトに異動になると発表した。この人事決定は内外に衝撃をもって迎えられた。しかしハッカー兼起業家である当人の心中でレクイエムはとうの昔に鳴り始めていたのだ。正確には9ヶ月前から。

「AndroidはAndyからとった名前」と言われるように、AndroidはAndy Rubinとイコールだった。Androidはアップル勤務当時の同僚が1989年にロボット好きな彼につけたあだ名であり、ルービンが2008年までやっていた個人サイトもAndroid.comだ。

だから昨年6月に「ルービンがグーグルを辞めてCloudCarという小さなスタートアップに移る」という噂が流れた時にはちょっとしたパニックとなった。ルービンは名声もあるしラリー・ペイジCEO派閥内の地位も申し分ない。その彼が去るというんで噂は瞬く間に広まり、人々はもう辞めるのが決まった人みたいに彼の偉業を大げさに讃えたものだ。「ワ~オ、何年かの間にアンディーもグーグルでよくこれだけのことやったもんだよ」と書き立てたのはシリコンバレーの五月蝿いアブ、ロバート・スコーブルだ。

ルービンはすぐ噂を打ち消した。CloudCarは自分がロスアルトスで運営しているインキュベータをオフィスに友だちが立ち上げたスタートアップだと誤解を正し、「グーグルを辞める予定はない」「27日に(I/Oで)会おう!」とGoogle+に書いた。その言葉通りI/O会議でもステージを務め、Androidと切っても切り離せない人物であることを内外に示した。

Scoble was also quick to spread Rubin's denial
噂拡散も速いけど訂正拡散も速いスコーブル
(c) Google+ Ripple


それが去年6月で、木曜のペイジCEOの発表ではルービン当人が「トップの座を譲り、グーグルで新たな章を始める潮時と判断した」という。ルービンは開発者宛ての書簡でも似たようなことを繰り返した。「僕は根っから起業家なんだ」

グーグルを辞めるわけではない。しかし、何かが変わった。Androidがルービンの器を超えるほど成長し、ルービンはそんなAndroidに愛想が尽きたのだ。




Androidで潤うのは他社ばかり

10年足らずの間にルービンは、板書した一介のアイディアから地球上で最も人気のスマートフォン・プラットフォームにAndroidを変えた。アクティベートされた端末は7億5000万台超、ダウンロードされたアプリは通算250億超、ちっちゃな緑のAndroidロボットのブランド認知も高まり、アップル林檎に迫る勢いだ。

人気投票では勝利を収めたものの、Androidに立ちはだかる課題はもっとトゲだらけで前途は茫洋としている。Androidのタブレット市場のシェアはiPadに及ばない。開発者に家電自動化アプリを作ってもらうイニシアチブ「Android @ Home」もだんだん尻すぼみになってきた。

iPhoneが1台売れるごとにAndroidは3台売れているこの期に及んでもグーグルは未だにこのオープンなシステムをテコに自社の優位を引き出す方法を完全には把握しきれていない。Androidは端末メーカー(特にサムスン)にとっては最高でも、グーグルのエコシステム育成には期待したほどの成果があがってない。大して儲けも出ていない。「皮肉な話、マイクロソフトの方がグーグルよりAndroidで儲けを出してる事例もあるぐらいだからね、特許料で」とガートナーのアナリスト、マイケル・ガーテンバーグ氏は言う。他方、Androidがグーグルの手を完全に離れてしまってる例もある。 アマゾンのKindle FireはAndroid端末だが、言われないとAndroidとはわからないし、それにアマゾンのアップストアはグーグルと競合関係にある始末だ。

一匹狼

ルービンはビジョナリーでアーキテクトで、自分の手でなんか作るのが好きなハッカーだ。アップルではエンジニアとして働き、マイクロソフトではマネジャーを務め、イノベーティブなスタートアップを2社立て続けに作ってそれが大当たりした、DangerとAndroidである。ルービンを褒める人は、どちらかというと彼の物事を始める才能の方を高く評価している。「アンディーと働くのは最高だ。一見不可能に思えることでもビッグな目標を立て、それに向かって小さなチームを動かしていく、その手腕がすごいんだよね」と、グーグルのインフラ部門上級VPのUrs Hölzle氏はThe Vergeの取材に対し書いてきた。「見事な才能の持ち主で、すごくインスパイアされる。他の誰かがAndroidを実現できたとは、とても思えないよ」

だがそんなルービンも、Androidをグーグルの財源にすべく大手と提携を結ぶ方面のこととなるとヤル気も能力もさっぱりなのだった。サムスンがAndroidでスマホ作って売ってリッチになるのを尻目に、グーグルのブランドは背後に追いやられ影響力も徐々に削がれていった。「アンディーは一匹狼のアーティストなんだね。目標決めたらそれに向かって脇目も振らず走っていく」―ルービンと働いた経験のあるモバイル業界某エグゼクティブはこう語る。「Androidがある程度の規模に成長し、社の内外と折衝・協働・提携が必要になった段階で彼はイラつくようになり事業の管理ができなくなった。Androidがアンディーを越えたのさ。正直、次どこに駒を進めたらいいのかは彼自身にも分かってないんじゃないかな」

自分が立ち上げたDANGERを追われる

ルービンとDangerは最初期のスマートフォンの作り手とされる。彼らがウェブ機能と独自のアプリのエコシステムを備える端末として米市場でT-Mobileから売りだしたのが「Sidekick」だ。ドットコム崩壊の真っ最中に彗星の如く現れ投資もガッツリ確保したDanger社はあたかも高級クラブハウスのようだった。 社内にはSparrowの電気自動車、セグウェイ、アーケードのレースゲーム『ポールポジション』があり、ルービンは毎週カラー液晶の携帯をとっかえひっかえ使っていた。会社にはルービンのハッカー友だちのリッチ・マイナー、スティーブ・パールマン、あのスティーブ・ウォズニアックまで立ち寄っていた。

4年の間、ルービンは疲れを知らぬ鬼CEOとしてDangerを率いた。「ストレスの塊だったと思うけど、それを決して表には出しませんでしたね」と、Dangerでルービンの側近だった元同僚は言う。 「倒れる寸前という感じで夜遅くまで働いてる姿を見かけたものです。ところが朝になると、パリッとした白いシャツ着て朝も早くから出社してくるんですよ、そのまま取材とか会議に出れる格好で」

Dangerは技術では時代のはるか先をゆくパワーハウスだったが、ビジネス面ではアンダードッグだった。「思い通り他社の協力を得られず苦労しましたね」(ルービンの元同僚)。2003年、ルービンは株主の役員会決議で解任となる。多数票を得たのは軍需・通信業界出身の白髪のディールメイカー、ハンク・ノーサフトだった。

「会社には綿密なプランもあり、その実現にはアンディーの力がとても必要でした」と語るのは、Danger初期投資家のひとりのVSP Capitalマネジングディレクター、ジョアンナ・リーズ女史だ。「会社は運用がすべてという段階になってたんです。製品には十分技術力がある。そこでハンクを引き入れました。大型の商談・提携をまとめる面のことは彼、詳しいですから。ハンクは会社を次段階に引き上げるCEOだったんです」

ルービンは間もなく会社を去り、Androidを始めた。「私もあの時は『彼のことだから長くは残らないでしょうね』と言ったのをよく覚えています」(リーズ女史)

そこに現るラリー・ページ

ルービンがグーグルで働き出したのは2005年、まだ駆け出しのAndroidをラリー・ペイジが買収した時からだ。セルゲイ・ブリンはAndroidからは距離を置いた、自分はモバイル理解できないからと言って。エリック・シュミットの反応も似たようなものだった。が、ペイジはルービンの掲げるオープンなモバイルOSというビジョンに惚れた。古臭いキャリアの体質に囚われず携帯にイノベーションを強いる世界的ムーブメントをグーグルが牽引していくのだ、という考えに彼は夢中になった。

グーグルにAndroidはピッタンコ理想的というペイジの信念にブレはなかったが、ルービンの方は最初からそこまで乗り気だったわけではない。「グーグルは狂ってる」、組織がルーズで会社の体を成していない、とグーグル史に詳しいスティーブン・レヴィには言っていたようだ(レヴィの本『 In the Plex』より)。しかもルービンは限定モデルの独産スポーツカーをガレージに隠し持ってるんで有名。金持ちになっても普通に暮らすのが標準のグーグルでは成金趣味とか言われて浮いてしまう、という気持ちもあっただろう。

買収は極秘裏に進められた。Businessweekは「グーグルがAndroid買収、黎明期ワイヤレス戦略の鍵を握る買収」という見出しでこの件を報じた。記事には「事業の詳細は一切不明」とある。

進まない、外部との連携

こうしてルービンはグーグルトップの経営陣に迎え入れられ、モバイル&デジタルコンテンツ部門上級副社長として製品開発・提携を率いる傍ら、スティーブ・ジョブズに物申したりなんぞする立場となったわけだが、ルービンの配下ではAndroidの社外への働きかけもあんまり実を結ばなかった。Androidを推進する業界同盟「Open Handset Alliance」も鳴り物入りで始まったものの、大手OEMによるプラットフォームのフラグメント化が進み背景にフェイドアウトしていった。 大型提携と言えばキャリア間のリリースを調整する「Android Update Alliance」もあるが、あれも成果は限られている。ルービンはモトローラ買収にも予算を振り分けたが、あの波乱ずくみの高い買い物の元が取れたとは決して言えない。グーグルCFOのパトリック・ピケットは、モトローラから引き継いだ製品ロードマップには感動のカの字もないと言っている。特許はスゴいという前評判だったが、それさえも技術標準で他社を訴えるのはどんなものか世界的に論議が高まり、使おうにも使えないのが現状だ。

今どれぐらいAndroid担当社員がいるのかグーグルから数字は出ていないが、ルービンが8人の小さな所帯を引き連れてきた当時からは比べるべくもない大所帯であることは確かだ(共同創業者のクリス・ホワイト、ニック・シアーズはもうグーグルにはいない。4人目の創業者のリッチ・マイナーはGoogle Venturesに異動した)。リンクトインで配属先がAndroidやGoogle Playのグーグル社員を検索すると200人以上ヒットするから、実数はもっとだろう。元社員によると、2010年当時は「大体200人から250人ぐらい」だったが「あれからまた増えた」という。因みにDangerでCEOを辞めるまでルービンのもとで働いていた社員は100人だった。

Androidトップ降板

グーグルからルービンの異動先の発表はまだないままだが、社内の最先端のR&Dラボ「Google X」に移転になるという専らの評判だ。ルービンは投資家であり、所有する特許は11を超え、出願特許も山とある。ハードウェア好きで、特に写真を移動・撮影する技術に目がない。マイクロソフト時代には会社の雑用から逃れてロスアルトスの自宅のラボに篭ってキンコン物づくりをしていたものだ。ラボの窓にはこんなネオンサインが出ていた。「Robots that kill」

アップル時代には全社員に株式最新情報を表示するシステムをつくり、Danger時代にはカメラの機材を持ち込んで、サイトで代わる代わる表示するSidekickの写真を撮った。「車の中はガジェットだらけ。後ろから撮る機材なんてのもありましたよ」とリーズ女史。 「家もガジェットだらけ。自分の手で触れられるものが好きだったんですね」

ルービンは次章に進み、AndroidはChrome&Apps部門トップ兼務の上級副社長スンダー・ピチャイの手に委ねられた。グーグルが自社デスクトップOSのChrome OSとモバイルOSのAndroidを融合させる、という噂は兼ねてよりある。そう言われるのも道理で、例えばChromeウェブストアはGoogle Playに簡単に統合化できるし、タッチ搭載ノート「Pixel」ではデスクトップとモバイルの境界も曖昧になってきている。グーグルもふたつのOSがいずれ融合する可能性もあると言及はしているが、今すぐどうこうなることはない、と断っている。

ペイジはまとまりのある戦略下にグーグルのサービスを一本化したい方針だが、Chrome OSとAndroid融合の日はまだ遠い先の話かもしれない。ChromeとAndroidではロードマップからして違う。Android部門はエンジニアリング担当VPヒロシ・ロックハイマーの下、首の骨折れますよというぐらいの超スピードで動いている。日進月歩のモバイル市場のペースに乗り遅れぬよう、ソフトウェアをアップデートし、バグを修正し、セキュリティを変更している。そんなAndroidがChrome OSと足並みそろえて融合するのは並大抵のことではない。それにグーグルも別々にふたつOSを抱えていることに対し特に問題を感じてない節もあるのだ。少なくとも今のところは。

マスタープランまではないのかも

ピチャイは冷静沈着な人だ。グーグルのエンタープライズ用プロダクトのAppsを総括する傍ら、Chromeブラウザの市場拡大を果たした辣腕プロダクトマネジャーとして知られる。プレゼンもそつなくこなし、会社に忠実な軍曹で、コンスーマ向けおよびエンタープライズ向けプロダクト担当の経験もあるので、Androidの事業規模を拡大し利益を出す面ではその経験が生きてくるだろう。ピチャイが当面取り組みたいのはAndroidをChrome OSと融合させることではなくAndroidを次段階に引き上げることだ。ペイジは「ピチャイならAndroidに今の倍の力を入れ、このエコシステムを前に進める面で目覚まし働きをしてくれるだろう」と記した。

Google I/Oまであと2ヶ月。 チケットは1時間で売り切れたが、グーグルは何を発表するのだろう? 参加する開発者の関心は高まるばかりだ。が、マスタープランがあるというのは買いかぶりすぎかもしれない。特にAndroidは。「グーグルは自分たちが今何をやってるか分かってやってるとは限らない。分かるのはやり終えてからなんてこともある」とガートナーのアナリスト、ガーテンバーグは言っている。「まずは試行錯誤でしょうね」


[The Verge]

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