December 7, 2010

ジュリアン・アサンジ氏が豪紙に寄稿「使者を撃つな」:Don't shoot messenger for revealing uncomfortable truths

IN 1958 a young Rupert Murdoch, then owner and editor of Adelaide's The News, wrote: "In the race between secrecy and truth, it seems inevitable that truth will always win."

His observation perhaps reflected his father Keith Murdoch's expose that Australian troops were being needlessly sacrificed by incompetent British commanders on the shores of Gallipoli. The British tried to shut him up but Keith Murdoch would not be silenced and his efforts led to the termination of the disastrous Gallipoli campaign.

Nearly a century later, WikiLeaks is also fearlessly publishing facts that need to be made public.

Read more; Don't shoot messenger for revealing uncomfortable truths | The Australian

出頭の朝、故国の新聞ザ・オーストラリアンに載った長文記事をザッと訳しておく。

Don't shoot messenger for revealing uncomfortable truths

Julian Assange, December 8, 2010, The Australian


1958年、アデレードの「The News」編集長兼オーナーだった若き日のルパード・マードックは、こう書いた。「秘密と真実を競わせたら真実が常に勝つ。それは避けようがない」

彼の論考はおそらく、父キース・マードックの暴露報道を受けてのものだったろう。氏はガリポリの海岸で無能な英国司令官らのせいで豪州志願兵の命が無為に犠牲になった事実を報じた。英国は彼の口を封じようとしたが、それで黙るキース・マードックではなかった。彼の努力はやがて功を奏し、壊滅的被害を出したガリポリの戦いは終わった。

あれから1世紀近く経った今、WikiLeaksも恐怖にもめげず果敢に、公表すべき事実を公開している。

僕はクイーンズランドの田舎町に育った。そこではみんな自分の思うことを明け透けに喋っていた。大きな政府は信用しない、用心して見張らないと腐敗するかもしれないから―そんな土地柄だった。実際、フィッツジェラルド審問前のクイーンズランドは、政府が腐敗まみれの暗黒の時代だった。政治家が真実を伝えるべきメディアに報道規制をかけるとどうなるか。それを示す何よりの証拠だ。

こうしたことは僕の体の中にずっと残っている。WikiLeaksはこうした価値を軸に据え、その周辺に創成された。インターネット技術を全く新しいやり方で活用しながら真実を報じる―この発想は僕がオーストラリアで授かったものだ。

WikiLeaksがあみ出したのは、「科学的ジャーナリズム」という新しいタイプのジャーナリズムである。我々が他の報道機関と一緒に連携して働くのは、人々にニュースを伝えるためもあるけど、報じる内容が事実に間違いないんだよ、と証明するためでもある。科学的ジャーナリズムにおいては、ニュース記事を読んだその人が、記事のベースとなる元の文書までクリックして見ることができる。こうすれば読み手は自分の目でニュース判断ができる。この記事は本当だろうか? 記者は正確に伝えたのか? と。

民主主義社会には強いメディアが不可欠だ。WikiLeaksはその一翼を担う。政府を正直な状態にキープするお手伝いをするメディアのね。WikiLeaksはこれまでにもイラク、アフガン戦争に関する厳然たる真実を白日の元に晒し、企業の不正をスクープしてきた。

僕を反戦主義者と呼ぶ人もいる。念のため断っておくが、それは違う。国には戦争にいかなければならない時もある。正義のための戦争もある。だが、こうした戦争について政府が国民に嘘をつき、戦線に国民の命と税を出すよう嘘の上塗りを迫るほど間違ったことはない。戦争が正当化できるものなら、そのまま真実を述べればいい。支持するかどうかは国民が決めることだ。



アフガン、イラク戦争のログ、米国大使館の公電など、これまでWikiLeaksが報じたものを記事で読んだみなさんは、よく考えてみて欲しい。こうした事柄を全マスコミが自由に報じることができる、これがどんなに重要なことか。

アメリカ大使館の公電を報じたのはWikiLeaksだけではない。英ガーディアン、米ニューヨーク・タイムズ、西エル・パイス、独シュピーゲルも問題箇所を削除した同じ公電を流している。

なのに米国政府とその信奉者からこうしたグループを総括した母体として最も凶悪な糾弾に晒されているのは、WikiLeaksだけだ。僕は国家への反逆者と非難された。米国民ではなく、オーストラリア人であるにも関わらず。アメリカ国内には僕を特殊部隊に「始末」させればいいんだと本気で訴える人も大勢いる。サラ・ペイリンは僕を「オサマ・ビン・ラディンみたいに追い詰めて逮捕すべきだ」と言っているし、米上院には共和党から「国境を超えた脅威」と宣言して僕にしかるべき処分を行う法案が出ている。カナダ首相官邸の顧問はTVの全国放送で僕を暗殺すべきだ、と訴えた。あるアメリカ人ブロガーは、ここオーストラリアにいる僕の20歳になる息子を、誘拐して傷めつけてやれ、と言う始末だ。それも僕をおびき寄せるという、たったそれだけの目的で。

オーストラリア国民にとって不名誉なことに、ジュリア・ギラード首相と政府はこういう感情に臆面もなく迎合している。僕のオーストラリア国籍のパスポートを使用停止にし、WikiLeaksの支援者をスパイしたり嫌がらせしたり、オーストラリア政府の権力がアメリカ政府に全くいいように使われている。オーストラリアの検事総長も米国の捜査に全面協力しており、国民を陥れ、その身柄を米国に送るよう指示を下しているようだ。

豪ギラード首相も米ヒラリー・クリントン国務長官も、他の報道機関のことは一言も非難していない。何故ならガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、シュピーゲルは古くからある大手で、WikiLeaksはまだ若く、小さいからだ。

僕らはアンダードッグ(勝ち目のない犬)なのだ。ギラード政権はこのメッセンジャーを撃ち落とそうと躍起だ。何故なら真実が暴かれると困るから。同政権自身の外交・政治取引きを含めて。

僕とWikiLeaksスタッフに対する暴力の脅迫は公然と何度もなされてきた。が、オーストラリア政府はただの一度でも対策らしきこと、やってくれただろうか?  あのオーストラリア首相なら国民をちゃんと守ってくれると思ってる人もいるかもしれない。が、彼らは全く法的裏付けもないまま、僕らの活動を違法行為と糾弾するばかりだ。首相、検事総長たるもの、超然と尊厳をもって自らの任務を遂行するのが仕事ではないか。それがこのふたりは保身だけである。言っておくが、これで保身になると思ったら大間違いだ。

WikiLeaksが米国政府機関の不正事実を公開するたびに、オーストラリアの政治家は国防省の音頭に合わせて「おまえは人命を危険に晒している!国の安全を!兵士を危険に晒すのか!」(これもおそらく間違い)の大合唱。そう言う端から、WikiLeaksが公開することなんて重要でもなんでもない、と言う。どっちも正しいなんてことあり得ないだろ。どっちなのだ?

実はどっちでもない。WikiLeaksは出版歴4年。この間、政府のことは抜本から変えてきたが、人の目が届く範囲で、危害を受けた個人はひとりも出していない。ところが米国は(オーストラリア政府も共謀だ)、この数ヶ月だけでも何千人という人々に危害を加えている。

米議会に提出した書簡の中でロバート・ゲーツ米国防長官は、アフガン戦争の記録公開でも機密に関わる諜報ソースやメソッドはひとつも表に出なかったと認めている。国防省は、WikiLeaksの報道が元でアフガニスタンで誰かに危害が加わったことを示す証拠はないと述べた。在カブールのNATOも、護衛が要る人はひとりも見つからなかったとCNNに話している。オーストラリア防衛庁も同じことを話している。我々がこれまで公開した何かが元でオーストラリアの兵士やソースに危害が加わった事例は、ひとつもないのだ。

でも、かといって我々の公開する内容が重要でもなんでもない、というのは当たらない。米外交の公電でも驚くべき事実がいくつか明らかになった。

► 米国は国連職員および人権保護団体職員の生体素材と個人情報(DNA、指紋、虹彩スキャン、クレジットカード情報、ネットのパスワード、ID写真まで含む)を盗むよう自国の外交官に指示していた。これは国際法違反に当たる。オーストラリアの国連外交官も狙われていた可能性がある。

► サウジアラビアのアブダラー王は、米国にイランを攻撃するよう求めていた。

► ヨルダンとバーレーンの政府高官は手段を厭わず、イラン核開発プログラムを阻止したいと考えている。

► 英国のイラク戦争に関する審問は「米国の国益」を守るため修正された。

► スウェーデンはNATOの極秘加盟国である。米国との諜報活動共有については国会も知らされていない。

► 米国はガンタナモベイ収容所の人々を受け入れてもらうため強硬手段をとっている。バラク・オバマはスロベニアが収監者を受け入れる場合のみスロベニア大統領との首脳会談に応じてもいいと条件を出した。豪州近隣のキリバティ共和国には抑留者受け入れと引換えに何百万ドルという金額を提示した。

ペンタゴン文書裁判で米最高裁は「政府の欺瞞を効率良く暴露できるのは自由かつ規制のない報道機関のみである」という歴史的判決を下した。現在WikiLeaksを取り巻く嵐を見るにつけ、真実を暴く全報道機関の権利を保護する必要性を改めて強く感じる。

―本稿寄稿者Julian Assange氏はWikiLeaks編集長

9 comments:

Tassa said...

長文翻訳お疲れさまです!
こちらのエントリーにリンクを張らせていただきました。
私が住むスウェーデンでは、メディアのWikiLeaksに対する評価はさまざまですが、好意的な記事もたくさんあります。

しかしながら、重要な証拠になるような『被害者』女性のうち1人のツイートが、削除されていたということはまだ言及されていません。
このことを1人でも多くの方に知って頂きたく、コメント欄を使わせていただきました。

詳細は私のブログに書きました。
http://tassaleaks.blogspot.com/2010/12/cablegate_08.html

satomi said...

貴重な情報ありがとうございます。いやあ…目眩が… 結局なんでもいいんですよね、身柄さえ取り押さえられたら。

アメリカはスウェーデンに送還を要請する運びですが、「欧州は死刑を許さない国が多いので、スウェーデンも極刑にしないという言質がとれないと身柄は引き渡さないだろう」という国際法の専門家の談話を読んでゾッとしました。それって終身刑…

Anonymous said...

レイプを主張していた女性はスウェーデンを出て、今は訴訟に協力するのをやめたみたいです。

ナオミ・ウルフやナオミ・クラインなど、著名なフェミニストたちがこの女性の言動に対する疑惑を投げかけ、この訴訟の根拠そのものを批判しています。

現在、democraticunderground.com で多くのスレッドが立っているので、読んで見てください。

nfsw19 said...

横からすみません。

例の「被害者」女性ミスAのツイッターは、だれかがキャッシュをもっていて、ネットに出回ってると聞いてます。実物は読んでないですが(どっちにしろスウェーデン語は読めません)、読んだ人から内容は教えてもらいました。

また、その内容にまで踏み込んだ記事が昨日のガーディアンに出てました。

Tassa said...

本当に法もへったくれもないって感じですよ…。

Ms.A(ってもう名前出ちゃってますが)は現在パレスチナの西岸地区でキリスト教系の団体のために働いているようですね。彼女のブログ(https://annaardin.wordpress.com)によると来週、Yanounという小さな村に移るんだとか。(そこへ取材しに行くのはさぞ難しいでしょう…)

ところで、スティグリッツの談話、拝読しました。素晴らしかったです。ありがとうございます。
私はポランニーを少し研究に使っていたことがあり、スティグリッツが『大転換』に寄せた序文にはぐっときました。こういう受賞者がいると、まだまだノーベル賞も腐ってないかなと希望が持てます。

長々と失礼しました。。

Tassa said...

本当に法もへったくれもないって感じですよ…。

Ms.A(ってもう名前出ちゃってますが)は現在パレスチナの西岸地区でキリスト教系の団体のために働いているようですね。彼女のブログ(https://annaardin.wordpress.com)によると来週、Yanounという小さな村に移るんだとか。(そこへ取材しに行くのはさぞ難しいでしょう…)

ところで、スティグリッツの談話、拝読しました。素晴らしかったです。ありがとうございます。
私はポランニーを少し研究に使っていたことがあり、スティグリッツが『大転換』に寄せた序文にはぐっときました。こういう受賞者がいると、まだまだノーベル賞も腐ってないかなと希望が持てます。

長々と失礼しました。。

kazhagiwara said...

オーストラリアの首相は「ジラード」じゃなくて「ギラード」です。

satomi said...

直しました!

Anonymous said...

Satomi さま、

ご相談したいことがあって直接メールを出しました。メールをチェックしてお返事いただけますでしょうか?

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