May 28, 2007

グーグル最後の日々:The Final Days of Google - in Japanese

Robert X. Cringely's "The Final Days of Google" is the must read. Is it going to be an inside job? -You be the judge. シリコンバレーのベテラン人気ジャーナリストが描く、グーグル崩壊のシナリオ。必読。コメント欄も素晴らしいが、ここでは本文だけ訳しておこう。

--グーグルを倒す人間は社内から生まれる。

The Final Days of Google"
by Robert X. Cringely
「将来ビジネス史を書く際、より重要な役割りを果たしたと記述されるインターネット企業はヤフーとグーグル、どっちだろう?
Yahoo: おいおい、ポータルを
発明したのはヤフーだよ。ヤフーは他社をほぼ全滅に追いやった市場のメルトダウンも立派にサバイブした。
Google: 自製のコンテンツは事実上ゼロであるにも関わらず21世紀のメディアを再定義した会社。
(コメントは誌上世論調査クラウドで)

時代は遡って1990年代、ビル・ゲイツはマイクロソフトを最後に倒す企業はまだ生まれていないだろう、と言った。つまり彼が言いたかったのは、マイクロソ フトのポジションはあまりにも強大なのでレッドモンド(MS本社)から王座を奪う可能性のある企業となると真にディスラプティブな--全く新しいビジネス --しか考えられない、ということだ。

ビルがこのとき語った会社がグーグルだったのではないか、と言う人もいる。そうかもしれないし、そうでないかもしれない、その辺は分からないけど、この話で僕がつい考えてしまうのは別のことだ。---仮にグーグル自体がどこか別の企業に倒されるとして、そっちの会社はもう生まれているのか?--- おそらくまだだろう。ただ、ゲイツが描いたシナリオと違って僕にはグーグルを倒すスタートアップの創業者たちがどこにいるか大体の見当はついている。彼らは今この瞬間にも働いているのだよ、グーグルで。

グーグルというのは起業家を培養する素晴らしいペトリ皿だ。しかし同時に起業家タイプの社員をほぼ全員失望に追いやる悲しい運命にある。ここが鍵。---グーグルは自らを破壊に追いやる種を撒いている。そうせずにはいられない。

この事情に詳しくない人、忘れちゃった人のために簡単に背景をおさらいしておこう。----グーグルは探しうる人材の中で最高の技術者を雇うために膨大な 労力を費やしてきた。現在グーグルが抱える各種ラボでは何千人もの博士号が働いている。その多くは成功した他社から引き抜かれてきた人たちだ。グーグルは中小企業も大量に買収している。その多くは技術や技術的才能が目当てで買われてきた会社だ。この会社がさらに多くの起業型DNAを混合体に注入する。

同社は大学からストレートで入ったジーニアス(天才)、スタートアップからストレートで入ったジーニアス、マイクロソフト/IBM/ヤフー/その他諸々からストレートで入ったジーニアス、これらジーニアスをひとつにまとめ強力な複合体を創出してきた。頭脳明晰な彼らは個別の仕事とチームの仕事をこなし、就労時間の20%は自分の新しい技術アイディアの追求に没頭していい約束になっている。グーグルを創業したサーゲイ・ブリンとラリー・ページの2人は自分らの乗組員がこの20%の時間で何千ものアイディアや技術を生み出していけば、その商用化で会社はこの先数十年安泰だろうと、そう確信している(そう信ずるに足る十分な裏づけもある)。

これは天才的な戦略だ。ほぼ完璧でどこにも隙がないように見える。だけど…違うんだな、それが。グーグルのビジネスを不老不死にするこの戦略には致命的な欠陥がある。それが引いては会社を潰すことになる-。

欠陥というのは単純で、3つの部分から成る。まず、自分のアイディア追求に使えと言われた週勤務時間の20%を使ってグーグル社員が開発する何千というアイディアと技術、ここだ。こうした新規アイディアには今の水準より高すぎて実践向きじゃないもの、安全上問題のあるものさえ沢山混じっている。

そうだな、例えばグーグルのジーニアスが考え出すビジネスのアイディアと技術が年間4000件だとしようか。今は大体その辺りの数字だからね。そのうち仮に1%が真に素晴らしいアイディア---つまり簡単に会社がひとつ立ち上がる大当たりのアイディア---だとする。そして誰もが唸るこれらトップアイディア40の下に、これまた無茶苦茶いいアイディアが360件あるんだ。こっちはサンドヒル・ロードのベンチャーキャピタリストに売り込みに行って遜色ないアイディアだ。残り3600件はもちろんゴミである。発明した当人以外はすぐ忘れ去ってしまうアイディアだが、これについてはまたすぐ後で触れることにしよう。

グーグル経営陣には、社員から上がってくるアイディア4000件のうち、どれが世界に通用するアイディアか見極める洞察力が備わっていると想定する。すると会社として取り組むべき40件を決めるのは彼らの任務ということになるんだが、そう仮定していいほどグーグルが信用できる存在かというと、そうとも言えないのだ。いや、本当。いくら経営陣が頭の良い人間でも企業忠誠心、偏見、妙なしこりから良からぬアイディアを採用し、素晴らしいアイディアを不採用にすることはあるだろうしね。けど、実言うとそれは大した問題ではなく、もっと大きな問題は別のところにある。----グーグルが会社として取り組める優秀なアイディアは年間何本なのか?という点だ。40本ということは、まずない。20本ですらない。グーグルほどの規模の会社となれば全社総力挙げて取り組める新規アイディアは年間約10件。うち5件は間違って採用されたアイディア、なのである。

こういう部分の話になるとグーグルも他の大企業と変わりはない。グーグルの競合相手のどこにでもいいから行って、トップの経営陣に今年$100M予算が割ける新規アイディアは何件か尋ねてみるといい。予算額の大小ではなく気持ちの配分(マインドシェア)、そして人的資源(リソース)を考えた場合どうなのか、と。 返ってくる数字は常に1桁だ。つまり10件新規プロジェクトを認めたところで疑念を買うばかりでグーグルには何の得にもならない-。

グーグルが年間10件のプロジェクトを追求すると、いくら進め方が正しくても5件は失敗に終わる。予想通りの失敗だったり、そもそもの最初から会社として取り組むほど価値のないアイディアだったりするのがその原因だが、その一方で会社に見捨てられたプロジェクトはまだ390件もある。うち35件は誰が見ても素晴らしいが認められなかったもの、355件は無茶苦茶素晴らしいアイディアだ。こっちのアイディアの方はどうなるのか?

膿んでいくのだ。

グーグルは技術の人が求めるものなら満足感の保証以外なんだって与える就労環境をデザインした。社員はトイレ、食事、飲み物(グー グルでは食事は常に無料だ)から100フィート圏内で働ける設計になっている。こうして、みんなが家に帰りたくなくなるような環境を創った。これはマイクロソフトが何十年も前に発見しレバレッジした手法だ。

ただ勤務時間中1分も休まず働く人間など誰もいない。グーグル・ギークだって絶えず無駄話もすれば仲間で固まって結束し、ダラダラやるのだ。そしてダラダラやる時間の20%で何をするかというと自分のかわいいプロジェクトの話をしてるに決まってるのだ。もう絶対そうなんだ。そしてその99.75%は会社に却下されたプロジェクトときてる。

自分のしょうもないアイディアがボツになって助かった、自分はなんてラッキーなんだ、としみじみ語るグーグル・ギークもそりゃ探せば何人かはいるだろう。でも、大半の人は正反対の態度をとる。会社の方針が間違ってる、そう見るのだ。

ここでちょっと一言、ストックオプションとベスティング(権利確定) のことに触れておこう。 グーグルでは社員にベスティング期間4年のストックオプションを支給している。ハイテク企業ならどこでも見られることだが、全額ベスティングした途端コ ロッと社員の態度が変わるという問題がある。マイクロソフトでは1980年代、一部に「FYIFV」というボタンを着ける人もいた。これは「F**k You I'm Fully Vested(バ○ヤロー、もう全部ベスティングしてしまったんだぜー)」という意味だ。グーグルのように特に上場が済んでしまった企業では4年満期の記念日前後に社員が会社を辞める流出現象も珍しくない。いくら労働環境が楽でも、同じことはグーグルでも起こるだろう。

さらにグーグルでは、ベスティングは済んだが権利行使はまだ、そんなストックオプションまで売却できるプログラムをモーガン・スタンレーと提携で創設してしまった。これで社員はもっと簡単にグーグルを辞めることができるようになった。例えばストックオプションの内在価値(現株価と対比した行使価格)によっては株式が“水準下(underwater)”、 つまり市価を割る場合がある。他社なら会社を辞める従業員というのは価値がマイナスのオプションは行使せず手付かずで残して去るものだが、グーグルのプログラムでは社員がまだ権利行使していないオプションも売って行使価格(マイナスの場合も含め)と“時間的価値(time value)”の差額を手にできるんだね。この時間的価値というのはオプション失効時の推定価値のことで、失効は通常ベスティングの5年後に起こる。グーグル株の場合、ほぼ常に時間は価値を生む。問題は「オプションが失効するx年後、グーグル株の価値が今より上がってるかどうか」だが、株価は無論高くなっている。従ってオプションもプラスの価値が出る。出るどころかグーグルの場合、株式が少々下がり傾向の時でさえ1株100ドル以上の価値が出ることもままあるのだ。

グーグルの何百人という社員 -- この数はすぐ何千人という数に膨らむ--がオプションをベストして支払能力をつけていくにつれ、時間と金、経験を兼ね備えたグーグルOBの数は増えていく。その数はポタポタと垂れる水の一滴から小川に変わり、やがて洪水になるだろう。そしてその中から、辞めた職場で却下された何千というアイディアの夢の実現に猛進する人が現れる。

無論、優れたアイディアというだけでは足りない。優れたアイディアなら常に世の中に五万と溢れている。本当に金になるアイディアというのは既にあるアイディアを取って、それが途方もなく新しい手法で動くよう、ピッタリのサジ加減で捻ることなのだ。見てごらん、グーグルvs. AltaVistaを。アップル vs. 既存の全ラップトップ、全mp3プレーヤーを。YouTube vs. 既存の全動画サイトを。そんな実例なら幾らでもある。必要なのはアイディアに加え創造性、資力、コネ、運。--- グーグルの働き蜂には何一つ欠けるものがない。

今後サンドヒル・ロード(VC密集エリア)に殺到するアイディアの多くはグーグル元社員が出す事業企画になるだろう。それだけではない。グーグルOBのグループからも上がってくるようになる。グーグルのカフェテリアで深夜、寿司とダイエットコークのタダ飯を囲んで自分らの未来の会社について計画を練っていた連中だ。考える人に備わった資質、グーグルが今後ベストアイディアの少なくとも半分は切り落としていく可能性をベースに弾き出すと結論はこうなる。次のグーグルの創業者たちは今晩も(社食で)ブリに舌鼓を打っている。


Robert X. Cringely (ロバート・X・クリングリー):
Technology journalist in Silicon Valley. Real name is Mark Stephen. Best known for his best-selling 1992 book "Accidental Empires: How the Boys of Silicon Valley Make Their Millions, Battle Foreign Competition, and Still Can't Get a Date".  PBSの人気ジャーナリスト兼TVホスト。本名はマーク・スティーブン。ギークとヒッピーが世界を変える不思議を描いた1992年のベストセラー「Accidental Empires」はTVドラマ化され、Cringelyのペンネームで出演している。

-Last edited on May 29, 2007

2 comments:

Yoshihiro said...

素晴らしい邦訳!参考になります。

satomi said...

もっと字を梳かないとコテコテで読みづらいですね…すみません。

水道橋smallcafeおもしろいですよねー。このエントリの一番下にある「全国ヤブ医者マップ」、友だち載ってないだろうな~と思ってクリックしたら削除されてました。残念。

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