December 17, 2005

空飛ぶ車スカイカーを作ったモラー博士に会う:Nieman-Marcus selling Skycar


dr.moller 2004.fall

LAの片田暁氏の紹介で引き受けた雑誌インタビューの取材でモラー本社を訪ねたのは今からちょうど1年前。同じ片田氏が今度は「ニーマンマーカスが売ってるぞ」と教えてくれた。なるほど、ニーマン。毎年アッと驚くクリスマスギフトで話題を攫う高級百貨店ならではの趣向だ。

スカイカーについては「子どもの頃から”数年以内に実用化する”って聞いて育ったよ」というアメリカ人も多い。問題は資本とライセンス(前人未踏の 夢って大体そうなんじゃないか)。その点、別特許のマフラーの製造販売で得た利益をスカイカーに回して夢を繋いできたモラー博士は偉い。

マスコミはおもしろおかしくとり上げて夢を煽ることはできる。けど、お金も出さないし許認可のサポートもしない。渋滞が危険レベルに達して社会全体がスカイカーの実用化を本気で考える未来を今に持ってくることも、できない。

罪悪感と無力感ばかりが残る取材だったが、今回のニーマンのニュースで博士がまた調子を取り戻しているのを見て大分救われた。

update (2006.10.):
スカイカーの競売価格は$3M+:SkyCar on eBay


M200M:M200Xは垂直型。これに対し同社が1991年着手したのは
水平型エンジンのフル設計だ。この時期に生まれた
設計コンセプトM200Mは世界の展示会で賞賛を浴びた。



空飛ぶクルマを実現した男―



車庫から車庫までひっ飛び。そんな夢のクルマ「スカイカーM400」の開発で世界をアッと言わせた発明家兼起業家のポール・モラー博士(米国)。彼はいかにしてスカイカー実現に至ったのか。学都デイビスのモラー本社に氏を訪ねてみた。(2004年11月:モラー本社)



幼い頃の夢はハミングバード
手のひらから自由に飛び立つハミングバードに
わたしは、なりたかった



「車が未来の地上移動の花形ならスカイカーは空の主役。空中速度は車の約5倍。運転には"パワード・リフト"という操縦士免許が必要ですが、いずれ完全コンピュータ制御になれば免許は要りません。人為ミスとは無縁だから保険も不要。持ち主はおそらくレンタカーに乗るような感覚でこれを使うでしょう。750マイル以下の空路輸送の75%、50マイル以上の陸路輸送の85%はスカイカーが担い、車は50マイル以下の短距離移動の主役に。核融合でも成功しない限り食料・農産物輸送には依然として高速道路が使われるでしょうけど」

交通の近未来図をこう語る博士は、UCデイビス航空学・機械工学部教授。自らの発明品であるマフラー技術の製品化で得た巨万の富を元手に'68年、VTOL実現のため最初の会社を設立した。'70年XM-4誕生。エンジン出力を高めた'80年代モデルM200Xは'89年実験成功。空飛ぶ円盤そっくりな機体で宙に浮く氏の映像が世界に知れ渡った。



M200X
The early model M200x looks just like a flying saucer!
They tested 200 times from late 1980s to early 1990s.
初代Skycar「M200X」。全自動安定化装置とワンケルエンジン(ピストン部
が三角形に近く往復運動部位の無い軽量化ロータリーエンジン)搭載。
'80後半から'90前半にかけ約200回のテスト飛行を実施した。



開発に着手した'80年代はコンピュータも古かったし、鉄より強くマグネシウムより軽い素材なんてのも無い。実現は途方もない話でした。転機は'89年。会社が特許技術の制御・安定化装置のデモに成功した年です。あとはパワフルなエンジンさえ開発すれば製品化は目前、そう感触を得たのはこの時ですね。



A snap shot from '70s I found on the hallway in Moller's
headquarter when I was following Dr. Moller. Look at
his style! What he's holding is a muffler, another patented
innovation of him, by which he founded the company to
generate R&D funding for his dream car.マフラーの製品化
と平行して飛ぶクルマの追求に明け暮れた'70年代。本社を
案内する博士をついていきながら廊下で見つけたスナップ。
博士の格好も思いっきり'70年代である。



こうして試作を重ねて誕生したのが「M400X」(2002年実験クリア)。実に35年余りの歳月をかけ理想のVTOLに辿り着いた。

***


氏の生まれはカナダ西部ブリティッシュ・コロンビア。
母は離れ小島の、父はデンマークの出身です。二人とも独立心旺盛でした。何もない農村ですから小さな頃から「必要なものは何でも自分で作れ」と叩き込まれましたよ。

モラー少年の場合はただ、作るものが並みではなかった。6歳で自分の家を建て、9歳にまた家を建て(今度は2部屋+三角屋根)、14歳で車を作り、15歳でヘリコプターの図面を引いた。もちろん全部”本物”だ。
トラクターは親父が重宝がって畑でよく使ってましたねえ(笑)。さすがにヘリは資材が揃わなくて完成は叶わなかった。あの設計通り作れてたらおそらく飛んでたはずですが。
と無念がる。



Dr. moller's first automobile: 
He built this cool automobile at the age of 14.
Grown up in a rural Canadian island, his parents taught him
to do everything on his own.
Driver's license? Don't ask me!
これがモラー少年14歳が作った幻のクルマだ! 
免許の細かい話はさておき
「ちゃんと走りましたよ」と博士。ハンドルを握るモラー少年も得意げ。


***

スカイカーの原型はハミングバードです、小さな頃よく遊んだ…。手の中にこうして閉じ込めて開くと、まるで飛び立つように羽ばたく。上下左右、自由自在にね。それを見ながら、ああ、こんな風に空を飛べたらな…そう思ったんです


自家用の垂直離着陸機(VTOL)の実用化までには航空連邦局の許認可や製造設備の確保、インフラ整備など幾多のハードルが立ち塞がるが、先行予約は100件以上集まっている(予約金25,000ドル。日本からの予約は1名で首都圏のレストラン経営者)。
大金持ちばかりと思うでしょ?それが意外とそうじゃないんですよ。大体は最先端の技術を先取りするのが好きなタイプの人。未曾有のものにも理解と共感を示し てくれる、いわゆる“フューチャリスト(未来派)”と呼ばれる人たちですね。

いずれコンピュータの完全制御になれば、目の不自由な人や重度の障 害の方でもどこだって飛んでいける、そんな時代が必ず来ます。
夢は今も、見果てぬ空を駆けめぐる。

(01.2004.Cataloger創刊号掲載)

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