ビットコインで暗殺市場を始めた三十郎:Meet Sanjuro, Bitcoin 'Assassination Market' Creator

Last month I received an encrypted email from someone calling himself by the pseudonym Kuwabatake Sanjuro, who pointed me towards his recent creation: The website Assassination Market, a crowdfunding service that lets anyone anonymously contribute bitcoins towards a bounty on the head of any government official。- Forbes.

JFK暗殺から50年。それとは関係ないが、ビットコインで暗殺市場を始めた人物がフォーブスのアンディー・グリーンバーグ記者の取材にこたえて話題だ。抄訳でどうぞ。

Meet The 'Assassination Market' Creator Who's Crowdfunding Murder With Bitcoins

BY Andy Greenberg, Forbes

[...] 桑畑三十郎を名乗る人物から1通の暗号化メールが舞い込んだ。「Assassination Market(暗殺市場)」を作ったので見て欲しいというのだ。

暗殺市場は、誰でもビットコインで匿名で政府要人の首に懸賞金をかけることができる市場で、言うなれば事業立ち上げ資金をクラウドソースで集めるキックスターターの政治家暗殺版だ。暗殺リストに名前の挙がった人が殺されると(三十郎の目的)、自分の手柄だと証明できる実行犯にサイトで集めた懸賞金が贈られる、というのがルールだ。

今のところまだ掛け金は大きくないが、無視できるレベルでもない。暗殺市場のオンライン開設から4ヶ月で、利用者からは6人の攻撃目標が投稿されている。

懸賞金は国家安全保障局(NSA)キース・アレクサンダー長官暗殺が10ビットコイン、バラク・オバマ大統領が40ビットコイン、最高額は連邦準備制度理事会(FRB)ベン・バーナンキ議長の124.14ビットコインだ。FRBは銀行制度に反対するビットコイン利用者にとって一番の目の敵。今はビットコインの為替レートも高騰しているので、124.14ビットコインで75,000ドル(7500万円)の金が議長の暗殺者に渡る計算だ。

from "Yojimbo"(1961)


[...]三十郎という名は黒澤明監督映画『用心棒』からとった(Silk Road創始者はDread Pirate Roberts、ビットコイン発明者はSatoshi Nakamotoのハンドルなのでそれにあやかった)。

懸賞金は「洗浄」して完全匿名化してから暗殺基金に回す。難しいのは実行犯だということをどう証明するかだが、これは予め死亡日時を記した文書を作ってハッシュという匿名化機能で特定の文字列に変換し、そのデータを懸賞金のビットコイン1個以上に埋め込んでもらう。殺害遂行後テキストファイルを三十郎に送って、そこに書かれた予告日時と殺害日時が合っていれば本人認証成立、で懸賞金送金と相成る。三十郎は1%を手数料としてもらう。

読むだけで噴飯物だが、三十郎的には「攻撃目標は他の人類に対して暴力を先に振るった人間だけだ。つまり法が堕落・腐敗し切ってて法の裁きが及ばないところにいる人物で、犠牲者は匿名で報復するほかに手段がない場合に限る」というのがケジメ。

匿名で懸賞金を集める暗殺市場という発想は三十郎のアイディアではない。暗号化ツールで政府の弱体化を図り個人をエンパワーする世界を夢見た1990年代半ばのサイファーパンク運動で既に語られていたものだ。解読不能なメッセージと追跡不能なデジタル通貨さえあれば暗殺の忌まわしき市場ができるだろう、とインテル元エンジニアでサイファーパンクML創始者のティム・メイ(Tim May)も1992年、「Cryptoanarchist’s Manifestoクリプトアナーキスト宣言)」の中で言及している。

その何年か後にインテル元エンジニアのジム・ベル(Jim Bell)がまさにメイが唱えた通りの暗殺市場を論文「Assassination Politics」の中で提唱した。Tor、Bitcoinさえ出てこないが、そこに書かれた内容は三十郎のスキームそのものだ。
もし仮に人口の0.1%、1000人にひとりが、「あの政府のゲス野郎消してくれた奴には1ドル払う」と言ったとする。もうそれだけでその首には25万ドル(2500万円)の懸賞金がかかることになる。仮にその懸賞金を集めても身元がバレないという数学的に100%の確信が誰かにあるとしよう。懸賞金を集める過程で誰にも会わなくていいし、話もしなくていい、従って後で顔が割れる心配もない。完全に匿名、完全に秘密、完全に安全。しかも集金は簡単でセキュア。こうなるともう、政府の役人はおっかなくて職権乱用なんて真似は迂闊にできない。郡の委員より上のポストは危なくて誰もなり手がないなんて状況も十分起こりえる。
ベルは脱税および政府職員ストーキングで長年の刑務所暮らしを終え、2012年3月に釈放されたばかり。メールで聞いてみたら三十郎とはなんの関わりもないと否定した。

三十郎自身はベルの構想はずっと前から知っていた。が、それを実行に移そうと思い立ったのは夏のエドワード・スノーデンによるNSA監視活動の大量暴露がきっかけとなった。[...]

アングラの暗殺市場は他にもあるが、なんせ金銭授受は殺害後なので詐欺かどうか見分けようがない。その点について三十郎は「こればかりは信じてもらうしかない」と話している。「自分は多少質素が、生活には困っていない。 唯一苦痛なのは、日々の暮らしから自由(主にプライバシー)が損なわれてきたことだ。こればかりは金では買えない。だから金なんて要らない。自分はこのプロジェクトが成功すればそれで満足なのだ。そのためにも政治家には死んでもらわないといけない」。

「自分はクリプトアナーキストだ。我々の未来は明るい」



[Forbes]

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