NYでチップ撤廃の寿司屋が話題。チップの起源・意味・相場:NY Sushi Restaurant Bans Tipping

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“Following the custom in Japan, Sushi Yasuda’s service staff are fully compensated by their salary. Therefore gratuities are not accepted.” - Sushi Yasuda (via NY Times)

国連で人気NO.1の「寿司安田」がチップお断りにしたら、アメリカ人の間でも結構な反響らしい。NYタイムズによると、2ヶ月前からメニュー表示料金にチップを含めて一律値上げし、レシートには、
「Sushi Yasudaでは日本の習慣に従いサービススタッフに充分なお給料を支払っております。よってチップはお断りします」
…と明記したのだそう。チップが煩わしいと思っているのは日本人だけじゃないんだね。

チップの相場

チップは誰にいくら払うのか考え始めたらキリがないけど、今の相場はレストランなら総額の20%が上(満足)、15%が並(義理)、10%だと下(文句あるとき)。ひと昔前より上がっている。

ホテルのメイドさんは、CNNによるとひとり1泊1~2ドルで、高級ホテルは3~5ドル、モーテルは1泊なら不要で2泊以上はひとり1~2ドルが相場だ。メイドさんは毎日交代するので連泊の最後にまとめてじゃなく、毎日置くのがフェア。

Gratuity(Tip)込みの店は置かなくていい

外国人観光客の多いエリア(マイアミビーチなど)や大型チェーン店では、取りっぱぐれのないように最初から18%のチップを記入してくる店も増えてきた。請求書にTipと書いてくればまだしも「Gratuity(心付け)」という名目でツケてくる店もあるので、英語に不慣れな人は二重に払わないようご注意を。

こないだTVで「チップは客の任意なのにこれでは強制ではないか。サービスがダメな時はどうすりゃいいの?」と話題になっていたけど、その番組では「横線でビビッと消してもいい」って言ってたよ。実際やる人は見たことないけど。

…と思ったら、いた(~_~;)  なんでも今年1月に米セントルイスの女性宣教師がチップを横線で消して「私は神に10%払ってるのよ、なんであなたに18%払わなきゃならないの?宣教師より」と書き残したら、店員がレシート現物の写真をネットに公開して首になったようだ。レシートには余計なこと書かないようご注意を。

ホテルもサービスチャージ込みだから置かなくていい?

ホテルの部屋にチップ置くのは「日本人だけ」なんていうのは嘘で、最新の統計ではアメリカ人も30%の人は払ってる、とコーネル大教授がCNNに言ってるよ。

「ホテルの請求書にはサービスチャージが最初から入ってるからハウスキーピングには別途支払わなくていい」と言う人もいるが、gratuityは客が任意で払うチップで非課税なのに対し、サービスチャージは強制なので税金がかかる。似て非なるものだ。

あと、お掃除はひと部屋30分かかって、時給は10ドルちょっと。「充分もらってる」って言ってチップをケチるほどにはもらってないのが実情なので、コーヒー代ぐらい置いたげる方が。

チップは現金で置く方が喜ばれる

これはもう誰に聞いてもハニカミながら「現金で…」と言う。「なんで?」って聞くと、「んもーわかるでしょ」ってな顔される。現金なら店長に巻きあげられないし税金申告しなくていいもんね、はい。

因みにこれは脱税ではない。アメリカでは税務署のIRSがgratuityと認められる条件(飽くまでも客の任意、など)をちゃんと定めているのだ。

ここまで読むとなんとなく察しがつくと思うけど、チップはもともと欧州貴族の習慣だったのが、市民戦争後アメリカの成金がヨーロッパに旅するようになって貴族でもないのに貴族風吹かせて真似して持ち帰って、そこに給料ケチりたい店主らが乗っかって広まったものだ。

アメリカの古き良き伝統なんてとんでもない。当初は「アメリカは貴族社会でもないのになんでチップなんだよ」「そんなもん自分で払え」と随分反発もされた。1897年にはNYタイムズも「害虫・雑草のように広まっている」悪しき習慣だと嘆いている。20世紀初頭には労組がチップ反対運動を行い、チップ禁止令を出す州も6州あった。

が、チップはしぶとく定着。フランスでは1955年にサービスチャージとして全店一律請求に含めることが法律に盛り込まれて撤廃されたのに、なぜかアメリカで生き残ってしまった。

今やウェイターは時給5ドルとか、下手すると労働基準法の最低賃金2ドル13セント(チップもらう人はもらわない人より低い基準が適用される)で、マクドナルドよりまだ低い給料で働かされている。それでも仮に1時間で100ドル払うテーブルを3つ担当すれば時給30~60ドル…悪くない。これがメニュー込みだと税は払わなきゃいけないわ、店員の時給はあげなきゃいけないわで、店主は大変なのだ。

厨房と分配できるシステムに切り替える店も

でもウェイターがチップ独り占めだと、面白くないのはシェフ・皿洗いなど厨房の裏方さんだ。

「生活費払えないから1週間ウェイターをさせてくれ」とシェフに言われて、こりゃいかんなと思ったカリスマシェフのトーマス・ケラーはナパの高級料理店「フレンチ・ランドリー(French Laundry)」でチップを廃止して19%のサービスチャージを一律課金してスタッフ全員でわけるシステムに切り換えた。彼のNYの超高級料理店「パー・セ(Per Se)」も20%一律課金だ(サービスチャージには8.25%の消費税がかかるので客の実負担は20%×1.0825)。これは有能なシェフ流出に歯止めをかけることが狙い。

先日全焼してしまったバークレー伝説のレストラン「シェ・パニース(Chez Panisse)」のアリス・ウォーターズも、ずっとサービスチャージは一律15%で通していた。

当然のことながら、これはウェイターには評判が悪い。「これでイタリア行ってね」とチップ1000ドルもらったり、そういう夢がないものね。メニューに含ませると計算の苦手な客には単に高い店だと思われて終わってしまう、という調査もあって、いろいろ悩ましいところ。チップは当分衰える気配もないのである。

私はチップは何年経っても馴染まない。高いお店だと最後に計算してエエッてなるし、いくらにこにこ感じのよい応対でもチップが目当てかと思うと、お互い哀れで。やっぱり貴族にはなれないわ~。


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裏方は大変

Comments

  1. チップのことを考えると、サービスとサポートとは、ホスピタリティとおもてなしとは、、、などなど色々と考えてしまいますが。
    ただ、Tip は込でもいいのかもしれないですが、Gratuity (心づけ) となるとやっぱり現金で手渡しと思ってしまうのは日本人感覚なのかなと思ってしまいました。

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  2. 語感的にはそうですねー。

    WindowsイベントでMacBook Airバキッというお話拝読いたしました。そう言えば昨日もアンチiPhoneの広告があまりにも評判悪くて動画取り下げ騒ぎが…。削除される前に見ましたけど確かに全然面白くなかくてひたすら長くて暗かったデス

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