AmazonBayと金融崩壊の架空シナリオ:DrKW Revolution 2015


DrKW Revolution is an "entirely speculative and fictional" short that deals with how GoogleCorp and AmazonBay came to own the financial markets (GMSV). It's an financial version of EPIC 2014 and Googlezon (11.2004 by Robin Sloan and Matt Thompson: summary).

Revolution was written by Sean Park - Head of Digital Markets and Credit Flow products at Dresdner Kleinwort Wasserstein (DrKW), the investment bank of Dresdner Bank. The original article in pdf is here, and the making of AmazonBay is here and here. He also wrote last Sunday that "following the commercial tie-up between eBay and Yahoo announced a few weeks ago, maybe I should make a YahooBay version." -Indeed;)

The part I liked the most was "SonyApple Xchange."

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EPIC 2014」(原文脚本全訳)が既存メディア崩壊のシナリオなら、「DrKW Revolution 」はその金融版。銀行は解体し証券市場はデジ化が進み、AmazonBayとGoogleCorpが世界金融市場を掌握する。これが今後10年、つまり2015年暮れまでに起こるという架空のシミュレーションだ。

ショート脚本はショーン・パーク氏(昨年6月発表の原案:pdf)。ロンドンとフランクフルトに拠点を置く名門ドレスナー銀行傘下の投資銀ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイ証券会社(DrKW)でデジタル市場・金融フロー商品部門のトップを務める人物だ。同社のRevolutionの宣伝?と思ったが、断り書きには「勤務先とは無関係」とある。公開は昨年だが、ここ最近、急に話題になってきた(GMSVも一昨日リンク)。

もちろんEPIC2014のメディア帝国Googlezonに触発されたパロディーだが、氏ブログで製作裏話追記を読むと、「なんで、こんな、ダースベーダーみたいなの?」との疑問には「明るく作ったって誰も見向きもしないでしょ」、「スポーツ賭博にやたら拘ってない?」との指摘には「コレは別に何だっていいんだ、今ある金融商品が全てじゃないってことさえ伝われば」と答えており、なにやら森羅万象が投機の対象となる予測市場を思わせる。

実際、追記にはグーグル予測市場部門の責任者が「一度是非おしゃべりしたいね」とコメントしていて、「うわ、やってみるもんだなあ」と感心。奇天烈なシナリオから時代のターニングポイントとなる話が生まれたって全然不思議じゃないし、こんなオープンな場で未来的な部門のブレイン同士の接触が図られるというのもエキサイティングな話じゃないかな。

デジタル革命は出版・メディア・広告・通信といったソフト産業、いわばメインストリートで先行する。それに対し今の今に至るまで微動だにしない最後の砦、それが証券・金融・投資のハード産業でありウォールストリートだ。

ならば今取引している商品相手に今のルールで永久に商いを続けていくかというと、「そうではないんじゃないの?」というのが氏の仮説。アナタはどう思う?


DrKW Revolution 2015
~スクリプト訳│
動画

  • 2015.12.  20世紀金融セクターを牛耳った国際証券企業と投資銀行グループは消滅し、それに代わって専門顧問、投資管理、アルゴリズム・ソフトウェア、コンサルティング会社がパワフルな電子決済取引と連携し台頭。銀行は膨大な資本プールの監視を行うだけの存在に落ちぶれる。ここに至る15年の主な出来事を振り返ってみよう。

  • 2004.08.  Google上場。2011年まで世界トップの市場価値を謳歌する。セマンテック・ウェブの進歩によりナレッジの分配の質は根底から変わり、ナレッジベースのメディア、テクノロジー、金融の各セクターで巨大企業の既存権益が消滅する。

  • 2005.06.  アライアンツ・グループの投資銀行部門DrKWがRevolutionを開設。資本市場の製品サービスのほとんどを最低単価で分配するクロス・アセット・クラス(cross-aseet class)の電子取引、分析プラットフォーム、自動化をここで行う。

  • 2005.10.  NY証券取引所(NYSE)とarca(Archipelago/アーキペラゴ)の合併が成立。新旧取引手法がせめぎ合う攻防の数年を経て、流動資産プールと電子取引技術の融合を一気加速。

  • 2006.02.  JPモーガンがモーガン・スタンレー(Morgan Stanley)を買収し、モーガン財閥が70余年ぶりに復活。ダイモンCEOは「合併による業務統合化でコストを大幅削減し、中核市場のマージン下降にアグレッシブに対抗していく」と伝令を下す。

  • 2006.05.-09.  JPモーガンの動きや、2005年のUniCredito/HVB合併に触発され、欧州で類似の銀行合併が相次ぐ。その中でもBNP Paribas (BNPパリバ)対ABN Amro、ドイチェ銀行対SGの合併は最大規模。

  • 2006.09.  Betfairが大型IPO。MANグループはスポーツ産業の流動性、アセットクラスの多様性に目をつけ、スポーツ取引に特化した史上初のヘッジファンドを創設、公開に踏み切る。

  • 2007.04.-11. Googleは世界の情報ソースとしての王位を不動にするため、株高をテコにアグレッシブな買収戦略を展開、高付加価値データを保有する各業界のリーディングカンパニーをバシバシ吸収していく。金融サービスからはトンプソン(Thompson Corporation)、Euromoney PIc、Markit Groupなど。

  • 2008.03.  2年に及ぶ難交渉を経てNYSE/ArcaとEuronext、LSEが合併、世界一の証券取引所ArcaNextが誕生する。

  • 2009.02.  世界一の商品サービス取引高を誇るeBayが、’金融業界には参入しない’という長年のポリシーを破ってArcaNextを買収、世界に衝撃が走る。新創設のSEC/FSA所轄子会社の名前は「eBay金融市場(eBay Financial Markets)」。一夜にして登録数10億人超、世界最大の金融サービス企業が出現する。

  • 2009.02.  ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が既存大手投資銀としては初の社内分割を断行。証券取引・分配のインフラおよび事業部門はeBayFM(金融市場)に売却し、残りの事業部門は新会社のGSAS(GS Advisory Services/GS顧問サービス)とGSCM(GS Capital Management/GS資本マネジメント)に2分割。前者は従来型企業金融顧問スキルに電子決済コンサルティング事業を加えた業態、後者は多様なアセットクラスと投資戦略を網羅する所有資本と第三者資本の展開可能なマルチファンド対応プラットフォームとなる。

  • 2009.02.-07.  金融サービス市場に電撃参入したeBay FMは、その柔軟な財務体質でTD AmeriEtrade(北米)、Revolution(欧州)はじめ大手国際電子投資ブローカーのプラットフォームを買収しまくる。

  • 2010.02.  「世界の商業発展のリーダーとしての国の地位が揺らぎつつある」-バラック・オバマ米上院議員発言を受け米議会は待望のオバマ-Ensign法案を可決。数十億ドルの産業を国内に誘致すべく、それまで賭博・ギャンブルとして禁忌とされてきたスポーツはじめ"結果取引(outcome trading)"をあっさり合法化してしまう。有識者たちは、”結果”取引市場ではオバマ議員の最後の選挙当落予想が僅差1,000票内まで当たった点を指摘。

  • 2010.06.  eBay FMがBetfairを買収、世界一の結果取引市場を自社プラットフォームに吸収。

  • 2010.08.-11.  電子商取引参入に押されて市場シェアと競争力を落としたJPモーガン、リーマン・ブラザーズ、HSBC-ML、CNP Amroの各社が既存小売仲介事業から撤退を表明、他社追随。

  • 2010.12.  スポーツ取引市場が4Q2010、ついに全ヘッジファンドを抜いてファンド流入高で首位に躍り出る(HFR発表)。MANグループの世界サッカー・ファンドは100億ドル以上を集め世界初の戦略スポーツファンドとなり、GSCMのモータースポーツ・ファンドは開設48時間で20億ドルを公募。

  • 2011.01.  世界最大企業のeBayとアマゾンが合併しAmazonBay誕生。合わせて2兆ドル超は、2009年ニュース・コープ対グーグル合併で生まれたGoogleCorpを抜く世界一の時価総額。AmazonBayの1日あたりの取引数は1,000億件を越え、その対象はありとあらゆる製品・サービス分野に及ぶ。

  • 2011.10.  AmazonBayが、SonyApple Xchange(ソニー・アップル取引市場)を買収し、Xステーション関連のバーチャル製品の取引を傘下に収める(Xステーション産業は2010年にドイツ経済を抜き世界第10位の巨大産業になっていた)。

  • 2012.05.  地上最後の大手国際投資銀行、シティ・ドイチェ銀行(CitiDeutsche Bk)が金融取引仲介事業における敗北を宣言。

  • 2013.07.  暫定バンキング・チームから財務顧問と融資を受け、Blackstone/Citadel主導コンソーシアムが2,000億ドルを投じIBMを買収する。過去最大の買収劇。プラザ・パートナーズが企業財務顧問と弁護士、資本市場のエキスパート、引き受けエージェントの精鋭チームを編成し、AmazonBayのネットワークを介して計76クラスの価格設定と配分を行い、31の法規区分と5万以上の決済構造にまたがる取引を行う。ファイナンス参加数は保険会社から個人投資家に至る総勢900万人以上。取引手数料は保険提供側のシンジケートとBlackstone/Citadelコンソーシアムからチームに支払われ、さらにIBMが事業目標を達成するごとに将来的にキャッシュフロー・ベースのローヤルティーが入る計算だ。

  • 2014.08.  ワールドカップで最有力株だったブラジルと中国が破れ、デンマークとイラクがまさかの決勝進出、広告レートが暴落する。GoogleCorp株の大量の売りを受け、同社CEOラクラン・マードック氏(三文役者じゃなく長男の方!)は34億ユーロ相当のヘッジを行ったと公表し、事態を収拾する。これはスポーツ取引としては史上最大規模。複雑なヘッジング戦略を企図したのはアライアンツ・スポーツ・リスク・ソリューションズのグループで、AmazonBayのスポーツ取引独自のアルゴリズムを使って実践した。

  • 2015.03.  米財務省Thain長官とオバマ大統領(うど!!!!)が大規模な米連邦政府金融貯蓄制度会改革を宣言、「ハミルトン大統領が最初の米銀を創設して以来の大型改革」となる。米財務省は新財政年度から赤字管理を新システム「PALM(Perfect Asset/Liability Management)」に移行。PALM導入により投資家は金額キッカリにキャッシュフローを組んで取引きが可能になる(現状、各”信託”の最低価値は最低100ドル、NPVは最低10ドル)ほか、政府公共事業も月次キャッシュフローをベースに金額キッカリの融資が可能に。社会保障制度でも各個人のキャッシュフローを反映した決済が実現する。

  • AmazonBayの取引マッチングの最新鋭システムにより、推定8兆ドル相当のキャッシュフローがリアルタイムでダイナミックに管理・マッチングできることから、財務省は全インスツルメントで完全な流動性を提供し、このシステムに対しバックストップの流動資産を提供する国際資本プロバイダが2,000社余りのシンジケートを形成する。財務省最終利回りはシステム内価格で算出し、ベンチマークを従来通り提供、時系利率とデリバティブ契約も執り行われる。かかる資産・信用管理と資本調達のアプローチが今後1、2年で全発行者に浸透する。

  • オンラインで常時繋がる環境で育ったデジタル世代が、この全く新しいパラダイムシフトを担う主力となるだろう。(結びは特に目新しい要素がないので省略。詳しくは原案を参照されたい)

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